2025.06.19
パッシブデザインとは?エアコンに頼らない家は、設計の力で実現できる

投稿日:2025.05.15 最終更新日:2025.06.11
「家の断熱性能アップには、まず窓から」
これは、最近の家づくりでは当たり前のように言われることです。
確かに、住まいの快適さや省エネを考えたとき、窓の役割はとても大きいです。
しかし、実は窓選びは「高性能な窓=断熱性能アップ」という単純な話ではないことをご存知でしょうか?
この記事では、失敗しない窓選びのコツから、一歩踏み込んだ「窓の断熱」について、単に窓の性能を見るだけでは分からない、本当に快適な家にするための窓の計画と考え方を、具体的な事例も交えながら分かりやすく解説します。
「窓のスペックだけじゃダメなの?」そう思われたあなたに、きっと新しい発見があるはずです。
窓のカタログ数値だけでは分からない、本当に快適な家にするための秘訣とは?
部屋の場所ごとにも、窓選びのコツってあるの?(事例画像付き)
(全て実際の引き渡し物件での統計)
プロフィール:
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。
保有資格:
日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員
目次
家づくりを考えるとき、間取りやデザイン、キッチンやお風呂といった設備に目が行きがちですが、実は家の快適性や省エネ性能に決定的な影響を与えるのが「窓」の性能です。
どんなに高性能な断熱材で壁や屋根を覆っても、どんなに優れた断熱工法を取り入れても、窓という「開口部」の性能が低ければ、そこから容赦なく熱は出入りし、期待したほどの効果は得られません。
ここでは、なぜ窓選びが単なるパーツ選びではなく、家全体の計画の中で考えるべきなのか、その理由を一緒に見ていきましょう。
窓などの開口部から出入りする熱の割合は、実は非常に大きいと言われています。
出典:「YKK AP」
例えば、夏場に外から室内へ流れ込む熱の約70%、冬場に室内から外へ逃げていく熱の約50%が、窓を通じて起こっているというデータがあります。
つまり、窓の断熱性能が低いと、いくら高性能な冷暖房設備を使っても、その効果は半分以下になってしまい、結果として光熱費が無駄にかさんでしまうことになりかねません。
逆に言えば、窓の断熱性能を高めることは、家の快適性をぐっと引き上げ、光熱費を大幅に減らすためにもっとも効果的と言えます。
窓の役割は、熱の出入りをコントロールするだけではありません。
太陽の光を室内に取り込み、明るく開放的な空間を演出するのも窓の大きな役目です。
この太陽エネルギーを窓から巧みに取り入れる「パッシブデザイン」(特別な設備に頼らず自然エネルギーを活用する設計思想)の考え方を取り入れれば、特別な設備に頼らずとも、家は自然と暖かく、そして明るくなります。
特に、私たちエムズアソシエイツが拠点を置く岐阜市は、年間日照時間が約2,200時間と全国でもトップクラスであり、冬の晴天率も高い地域です。
このような地域特性を考えると、窓を通じて熱を「逃がさない」だけでなく、寒い冬場には太陽の熱を「取り込む」工夫も、快適な住まいづくりには欠かせません。
例えば、冬の寒い日でも、南向きの窓から差し込む太陽の光は、室内をポカポカと暖めてくれます。(パッシブ設計の基本)
LIXILのシミュレーションによれば、南向きの大きな窓(高性能なもの)からは、電気ストーブ約3台分に相当する3,000Wもの熱エネルギーを取り込むことができるとされています。
出典:「LIXIL」
これは「日射熱取得」という現象で、窓の設計次第では、暖房に頼らなくても心地よい室温を保つことができるのです。
また、日中の明るい時間帯に、照明をつけなくても十分に明るい室内環境を実現できれば、照明にかかる電気代を減らすことができます。
窓から差し込む自然光は、人工的な照明とは違って、なんだかホッとする温かみがありますよね。
このように、窓の設計一つで、太陽の恵みを暖房や照明として有効活用できるのです。
「じゃあ、とにかく一番性能の高い窓を選べば間違いないの?」
もちろん、窓の基本的な断熱性能が高いに越したことはありません。
しかし、高性能な窓を選んだからといって、それだけで必ずしも快適な家になるとは限らないのが、窓選びの難しいところであり、奥深いところでもあります。
例えば、いくら断熱性能の高い窓でも、夏の日差しがガンガン差し込む西向きの大きな窓であれば、室温は急上昇し、冷房の効きが悪くなってしまいます。
あるいは、断熱性能が非常に高いトリプルガラス(3層ガラス)でも、日射熱取得率(η値:イータち)が低すぎると、冬場に太陽の暖かさを取り込みにくくなり、かえって暖房費が増えてしまうケースもあります。
これは、特に日照時間の長い岐阜市のような地域では注意したいポイントです。
例を挙げれば、築年数の古い家(実家や祖父母の家)では、縁側に出ると、冬でもぽかぽかと昼寝ができるくらい暖かいとうい経験をした方も多いのではないでしょか?
こうした古いお住まいでは、窓が一枚ガラスで窓の性能が悪いと、逆にこうした太陽の熱がダイレクトに室内に入りやすく、自然エネルギーの暖房熱として機能する場合もあります。
さらに、窓の性能は、壁や屋根、床といった家全体の断熱性能とのバランスもとても大切です。
他の部分の断熱性能が低いのに、窓だけを極端に高性能にしても、期待したほどの効果が得られないこともあります。
つまり、窓選びは、単に製品の性能を比較するだけでなく、
といった様々な要素をトータルで考える必要があるのです。
私たちエムズアソシエイツは、このような「家全体を見通した窓選び」こそが、本当に快適で省エネな家づくりを実現するための鍵だと考えています。
【断熱等級7(最上等級)にも対応】岐阜で一年中快適な家を建てるなら、株式会社エムズアソシエイツ(本社:岐阜県岐阜市)へ。長期優良住宅の認定基準やZEH基準を大幅に超える断熱性能で、夏は涼しく冬暖かい住まいを実現します。
窓選びは、一度決めてしまうと簡単に変更できないため、後悔のないように慎重に進めたいものです。
ここでは、私たち家づくりのプロが、これまでの経験から「これだけは押さえてほしい」と考える、窓選びの5つの鉄則をご紹介します。
1つ目は、「風の入り口と出口」を作ることです。
1つの部屋に窓が1つしかない場合、空気はなかなか動かず、効果的な風通しは期待できません。
理想的なのは、1部屋に最低でも2ヶ所以上の窓を設け、それらを対角線上に配置することです。
こうすることで、部屋全体にスムーズな風の流れが生まれ、効率的に空気を入れ替えることができます。
出典:「YKK AP」
YKK APのシミュレーションによると、対角線の2方向の窓を開けた場合は、換気効果がなんと約10倍も向上したという結果が出ています。
さらに、より効果的な風通しを得るための工夫として、
高い位置の窓(高窓)と低い位置の窓を組み合わせる: 温度差によって空気が上昇する「煙突効果」を利用し、効率的に熱気を排出できます。
家の南北を貫通するように窓を配置する: 建物に当たる風の圧力差を利用して、家全体に風を通します。
といった方法もあります。
出典:「YKK AP」
窓の大きな役割の一つが「採光」です。
特に、家族が集まるリビング・ダイニングには、大きな窓を設けてたっぷりと光を取り込みたいと考える方が多いでしょう。
しかし、窓を大きくすればするほど、人通りが多い場所では、外からの視線も気になってきます。
明るさとプライバシー、この相反する要素をどう両立させるか。 これが窓選びの腕の見せ所です。
対策としては、まず目隠しとなるフェンスや植栽(常緑樹)などを活用する方法があります。
また、壁の高い位置に設ける「高窓」や床に近い低い位置に設ける「地窓」なら、視線を遮りつつ安定した光を取り込むことができます。
また、日差しが入りすぎないように、最適な長さの庇や軒を設けるなどの工夫も必要です。
日中に屋外から室内が見えにくくなる「ミラーガラス(熱線反射ガラス)」も効果的ですが、夜間は室内が明るいと逆に見えやすくなるため、カーテンやブラインドとの併用が基本となります。
窓の種類によっては、カタログ上の断熱性能は高くても、実際の気密性に課題があったり、設計や施工次第で性能が十分に発揮されなかったりする場合があります。
特に注意したいのは、ルーバー窓(ジャロジー窓)と引き違い窓です。
左右に2枚のガラス戸があり、それぞれが左右に動くタイプの窓です。
構造上、2枚のガラス戸が重なり合う部分や、戸と枠の間に隙間ができやすく、気密性が低くなりがちです。
高性能な引き違い窓も出てきていますが、滑り出し窓などに比べると気密性では劣る傾向があります。
また、デザイン的に単調な印象になりやすいという側面もあります。
細長いガラス板が重なっており、ハンドル操作で開閉し、換気を行う窓です。
デザイン性が高く、雨の日でも換気しやすいというメリットがあります。
トイレやお風呂などで使われることが多いですが、構造的にガラス板の間に隙間が多く、気密性・断熱性は非常に低いと言わざるを得ません。
結露や寒さの原因になりやすい窓です。
天窓(トップライト)も注意が必要な窓の一つです。
屋根に開口部を設け、そこから光を取り入れる窓で、壁面の窓に比べて約3倍の採光効果があると言われ、暗くなりがちな部屋を明るく開放的にする魅力があります。
しかしその一方で、雨漏りのリスクがもっとも高い窓でもあります。
また、夏場の日差しを多く取り込みやすく、室温上昇の原因になることもあります。
天窓を採用する場合は、信頼できるメーカーの製品を選び、経験豊富で高い技術力を持つ施工業者に頼むことが絶対条件です。
もちろん、窓単体の性能も大切ですが、窓が取り付けられる壁との取り合い部分や、サッシ周りの気密処理がいかに丁寧に行われるかが、とても大切になります。
「せっかく大きな窓を付けたのに、ソファを置いたら窓が半分隠れてしまった…」
「窓が大きくて、家具の置き場に困る」
せっかく窓を設けても、家具の配置によってはその魅力が半減してしまったり、使い勝手が悪くなってしまったりすることがあります。
窓を設置するということは、そこに壁がなくなるということです。
リビングに大きな窓を設けたい場合でも、設計段階で、どこにどのような家具を置きたいのか、どのように部屋を使いたいのかをシミュレーションすることが大切です。
5つ目は直射日光を窓の外で遮ることです。
夏の厳しい日差しは、室温を上昇させ、冷房の効きを悪くする大きな原因となります。
特に、西日が差し込む窓は、夕方になると耐え難いほどの暑さをもたらすこともあります。
このような夏の日差し対策として、多くの方がまず思い浮かべるのはカーテンやブラインドかもしれません。
しかし、これらは「窓の内側」での対策であり、一度室内に熱が入ってしまってから遮るため、効果は限定的です。
本当に効果的な日差し対策は、「窓の外側」で行うこと。 これが鉄則です。
太陽の熱は、窓ガラスを透過する前に遮るのがもっとも効果があります。
窓の外側で日差しをコントロールすることで、室温の上昇を大幅に抑え、冷房効率を格段に向上させることができます。
対策の種類 | 主な特徴 |
---|---|
庇(ひさし)・軒(のき) | 窓の上部や屋根の延長で、夏の日差しを遮り、冬の日差しは取り込むように設計できる。 日本の家屋で伝統的に用いられる工夫。 |
アウターシェード・外付けブラインド | 窓の外側に取り付ける日よけ。使わない時は収納可能。 日差しを効率よくカットしつつ、デザインも選べる。メッシュ素材なら風通しも確保。 |
緑のカーテン | ゴーヤやアサガオなどの植物で窓を覆う自然の日よけ。 見た目が涼やかで、蒸散作用による冷却効果も期待できる。手入れが必要。 |
オーニング | カフェのテラスなどで見かける布製の日よけ。角度調整が可能で、電動タイプもある。 |
ここまで窓選びのコツを見てきましたが、窓そのものの性能が高くないと、どんな工夫も効果が薄れてしまいます。
ここでは、私たちエムズアソシエイツが標準仕様として採用している窓の仕様とその効果について、詳しく見ていきましょう。
これらは、近年の高性能住宅でも標準的な仕様になりつつあります。
エムズアソシエイツでは、熱を通しにくい「樹脂サッシ」を標準仕様としています。
窓のフレーム(サッシ)の素材として、以前はアルミが一般的でしたが、今は「樹脂」が主流になりつつあります。
なぜなら、樹脂はアルミに比べて熱の伝わり方が約1/1000と、各段に熱を伝えにくい素材だからです。
従来のアルミサッシはフレーム部分が熱を通しやすく、窓全体の断熱性能を低下させる大きな要因となっていました。
また、結露が発生しやすく、カビやダニの温床になったり、窓周りの木材を傷めたりする原因にもなっていました。
一方、樹脂サッシ(例:YKK AP社製 APW330)は、窓枠からの熱の出入りを大幅に抑えることができるため、高い断熱性能を保つことができます。
また、冬場の結露リスクも大幅に軽減され、カビの発生も抑制します。
さらに、樹脂サッシは気密性や耐久性にも優れているのもポイントです。
サッシだけでなく、窓の大部分を占めるガラス面も、断熱性能を左右する重要な部分です。
エムズアソシエイツの標準仕様では、「Low-E複層ガラス」「アルゴンガス封入」「樹脂スペーサー」という3つの技術を組み合わせています。
現在の高性能窓では、この3つの技術を組み合わせることが標準的になっています。
サッシ断面
要素 | 働き・効果 | 断熱性能への貢献 |
---|---|---|
Low-E複層ガラス | 2枚のガラスの間に特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティング。 この膜が、夏の太陽の日射熱を反射して室内の温度上昇を抑え、冬は室内の暖房熱が外へ逃げるのを防ぎます。 |
一般的な単板ガラスに比べ、約4倍の断熱効果を発揮。 |
アルゴンガス封入 | 2枚のガラスの間の空間(中空層)に、空気よりも熱伝導率が約30%低いアルゴンガスを封入。 ガラス間の熱の移動(対流)を抑制します。 |
複層ガラス全体の断熱性能をさらに向上させます。 |
樹脂スペーサー | 2枚のガラスの間隔を保つ部材(スペーサー)に、アルミではなく熱を伝えにくい樹脂を使用。 ガラスの端部からの熱の出入りを抑え、結露の発生を大幅に減らします。 |
アルミスペーサーに比べ、ガラス端部の温度が約6℃高くなり結露しにくい。 |
これらの組み合わせにより、窓ガラスの断熱性能は格段に上がります。
国が定める省エネ建材等級でも、最高ランクの4つ星★★★★を獲得するレベルです。
省エネ建材等級は4つ星
さらに、Low-Eガラスには、冬に太陽の暖かさをしっかり取り込む「日射取得型」と、夏の暑い日差しを効果的に遮る「日射遮蔽型」があります。
家の方位に合わせて使い分けることで、よりきめ細やかな温熱環境のコントロールができ、冷暖房に頼りすぎない、一年を通して心地よい室内環境をつくることができます。
玄関ドアや勝手口ドアといった他の開口部も、家全体の断熱性を考える上で見過ごせないポイントです。
特に玄関は、冬場に冷え込みやすく、ヒートショックのリスクも懸念される場所です。
私たちエムズアソシエイツでは、玄関ドアについても、一般的な温暖地仕様(D4タイプなど)ではなく、より断熱性能の高い寒冷地仕様(例えば北海道仕様のD2タイプなど)を標準的に採用しています。
こうした細部へのこだわりが、家全体の快適性と省エネ性能を底上げし、「魔法瓶のような家」の実現につながると考えています。
高性能な窓の基本をご理解いただいたところで、次は私たちエムズアソシエイツが岐阜という地域で特に大切にしている「窓の工夫」について、詳しくご紹介します。
それは、太陽の動きと岐阜の気候を読み解き、窓ガラスの種類を方位によって計画的に使い分けるという考え方です。
このひと手間が、カタログの数値だけでは見えてこない、本当に快適で省エネな暮らしにつながるのです。
エムズアソシエイツの家づくりの基本は、永久的に無料で使える「太陽の恵み」や「自然の風」を最大限に活かすこと。
これは、建物そのものの工夫で太陽の光や熱、自然の風を最大限に活用し、設備に頼りすぎない「パッシブデザイン」の考え方です。
そして、このパッシブデザインにおいて、窓は極めて重要な役割を担います。
岐阜市は全国的に見ても日照時間が長く、2019年のデータでは、47都道府県庁所在地のうち3位の2,196時間で、全国でも上位に位置しています。
この豊富な日差しを最大限に活かすため、エムズアソシエイツでは、東西南北の方角によって、窓ガラスの種類を使い分けています。
南向きの窓は、冬場の貴重な熱源です。
エムズアソシエイツでは、南面の窓に「日射取得型」のLow-E複層ガラスを基本採用し、太陽の暖かさを積極的に取り込みます。
日射取得型のLow-Eガラスは、太陽の熱を効率よく室内に取り込むため、冬の晴れた日には暖房なしでも室温が3~4℃上昇することも珍しくありません。
実際、エムズの家では冬の日中に無暖房で室温20℃を超える事例も多く、光熱費削減につながっています。
▼実際の冬期室温測定データ(エムズアソシエイツ モデルハウス)
例えば、このデータは、冬(2月8日)にエムズのモデルハウスで測定されたものです。
外気温が3.0℃と寒い日でも、南向きのLDK(リビング・ダイニング・キッチン)では、太陽の光だけで室温が22.0℃に達していることが分かります。(暖房器具未使用時)
このように、窓からの日射取得を上手に行うことで、冬でも快適な室温を保ちやすくなります。
冬に日射を取り込む分、夏は暑くなりやすいため、南面の窓には日射取得型のガラスと合わせて、庇(ひさし)の設計がポイントになります。
夏の太陽は高い位置から照りつけ、冬の太陽は低い位置から差し込みます。
例えば岐阜市付近(北緯35度)では、太陽の高さ(南中高度)は夏至で約78度、冬至で約31度と、季節によって50度近くも変わります。
この大きな角度差を利用して庇の長さを適切に設計することで、夏の高い日差しはしっかり遮り、冬の低い日差しは室内にたっぷり取り込む、という理想的な日射コントロールが可能になるのです。
窓の大きさ(高さ)によっても、庇や軒の最適寸法は変わってきます。(上図)
冬に太陽光をたっぷり取り込み、逆に夏は太陽光を部屋に入れずに遮断することを考えると、窓が大きければ、庇や軒の長さも必要で、
逆に、窓が小さければ少しの庇や軒を出すだけで効果があります。
これらは南側の窓だけに適するものですが、こうしたことも考慮して、軒や庇の設計ができると、より省エネで快適な暮らしが可能となります。
東西南北それぞれの最適な窓の選定に加え、ここまで庇や軒を設計することが、パッシブ設計には重要な要素です。
実際、CADシステムでのシミュレーションでも、適切な庇があれば夏至の昼過ぎでも直射日光を窓に当てず、冬至には午後遅くまで日差しを取り込めることが確認できます。
冬至の日の15時。この時間でも日差しを取り込めています。
夏至の12時。日射は完全に軒でカット出来ています。
▼実際の夏期室温測定データ(エムズアソシエイツ モデルハウス)
こちらのデータは、8月21日の夏日にエムズのモデルハウスで測定されたものです。
例えば13時や15時には外気温が34.0℃という猛暑ですが、LDKの室温はエアコンをOFFにしたにもかかわらず、23.0℃~24.5℃と、外に比べて大幅に涼しくなっていることがわかります。
東面・西面の窓は、夏の朝日・西日対策が重要です。
特に西日は低い角度から強く差し込み、室温を急上昇させます。
そのため、東西面の窓には「日射遮蔽型(または断熱型)」のLow-Eガラスを採用し、日射熱の侵入を抑えることを優先します。
このガラスは太陽の熱線(赤外線)を効果的に反射し、室内に侵入する熱量を大幅に削減します。
このおかげで、夏の朝夕の不快な暑さを和らげ、冷房効率を高めます。
※東西面の設計は都市住宅では隣家の影も利用できる場合があります(隣家が近ければお互い日射を遮り合う)。
北面の窓からは直接的な日射熱はあまり期待できません。
そのため、エムズアソシエイツでは、断熱性能を重視したガラス(日射取得型または断熱型のLow-E複層ガラス)を選定しています。
窓のメリットは、一日を通して安定した均質な光(間接光)が得られること。
眩しさや室温上昇の心配がなく、書斎や作業スペースなど、落ち着いた明るさが欲しい部屋に向いています。
断熱性の高い窓を効果的に配置すれば、北側の部屋も明るく快適になります。
このように、太陽の恵みを活かすことで、実際に住んでいる施主様からも日中はぽかぽかという声もいただいています。
「冬はエアコンを夜10時半から朝7時までしか使わないんですが、それでも夜に洗濯したものが朝には乾いているんです。日中も日差しが入るとポカポカで、子どもはお風呂上がりに裸で走り回ることもあります(笑)。」
(一年中、薄着で快適生活エムズハウスは温かすぎる!? |施主座談会|株式会社エムズアソシエイツ)「床下エアコンを使っていますが、24時間はつけていませんよ。それでも20度設定で運転しておけば、どんなに寒い日でもずっと同じ温度を保てます。」
(一年中、薄着で快適生活エムズハウスは温かすぎる!? |施主座談会|株式会社エムズアソシエイツ)「外では厚手コートが必要な気温でも、家の中では日中エアコンを切って生活できるのってすごいです!」
(この冬の暖房器具の稼働状況 | エムズアソシエイツ施主様ブログ)「見学時に『暖かい家』と聞いて半信半疑でしたが、実際に暮らしてみると、噂通り家全体が本当に暖かいです。時には暖房を入れなくても十分に快適で、寒い冬でも家の中ではほとんど暖房が必要ないほどです。」
(引用元:施主様アメブロ)
ここまでは窓選びの基本的な考え方やエムズアソシエイツの工夫についてお伝えしてきましたが、実際の家づくりでは、部屋の用途に合わせて窓を選ぶことも大切です。
ここでは、部屋ごとの窓選びのポイントを簡単にご紹介します。
家族が集まるリビング・ダイニングは、比較的長く過ごす場所なので、大きな窓を南向きに設けるのがおすすめです。
庭の景色を取り込むのも素敵ですね。
ただし、道路や隣家に面する場合は、外からの視線も入りやすいため、フェンスや植栽などで目隠し対策をしましょう。
夏の日差し対策として庇などを計画しつつ、冬には「日射取得型」のLow-Eガラスなどで太陽の暖かさをしっかり取り込めるようにすると、一年を通して快適に過ごせます。
キッチンは手元が明るいと作業がしやすくなります。
ただし、窓の位置によっては収納が制限されるため、バランスを考慮する必要があります。
シンクの前や作業スペースの近くに窓を設けるのが一般的ですが、難しい場合は、高い位置に横長の窓(ハイサイドライト)を設けることで、プライバシーを保ちながら安定した光を取り込むことができます。
西側にキッチンがある場合は、夏場に熱くなりやすいため、日差しを遮るガラス(日射遮蔽性能の高い窓)を選んだり、外付けシェードを設けるなど、日差しを遮る工夫をしましょう。
寝室は光が眩しかったり、音が気になったりすることがあります。
ベッドの配置を考え、朝日が直接顔に当たらない窓の位置にしましょう。
外の音が気になる場合は、気密性の高い樹脂サッシや遮音性の高い複層ガラスなどを検討するのも良いでしょう。
防犯面も忘れずに。
子供部屋は、日中過ごすことが多い場所です。
明るさを確保しつつ、ベッドや机の配置を考えて窓の大きさや位置を決めましょう。
ただし、窓が大きすぎると、家具が置きにくくなったり、夏場に暑くなったりするため、注意が必要です。
一般的には、床面積に対して15%程度の窓面積を確保すると良いとされています。
子供の安全のため、転落防止の手すりやストッパー付きのサッシを選ぶのも、小さなお子さんがいるご家庭では安心です。
浴室や洗面所、トイレといった水まわり空間では、湿気対策、プライバシー確保、そして防犯性が窓選びの大切なポイントとなります。
型ガラスやすりガラスなど、直接見えないガラスを選ぶのはもちろん、道路から見えやすい場所には、面格子などを設置して、目隠し対策をしましょう。
入浴中のシルエットが映らないように、窓の大きさや高さも考慮する必要があります。
また、断熱性の高い窓を選ぶことで、結露の発生を抑えたり、冬場のヒートショック対策にもなります。
階段や廊下は、FIX窓(はめ殺し窓)などの小さな窓を突き当たりに設けるだけでも、明るく開放的な空間になります。
ただし、外からの視線が気にならないよう、窓の大きさや高さ、ガラスの種類を工夫しましょう。
階段周りの窓は、転落防止のため、子供の手が届かない高さや、手すりを乗り越えられない位置に設置するのが安全です。
開かないFIX窓も対策の一つです。
さて、高性能窓で快適な家づくりができそうなのは分かったけれど、やっぱり費用が気になる方も多いと思います。
確かに初期投資はかかりますが、補助金や長期的なメリットも考えたいところ。
ここでは、気になる費用と補助金について見ていきましょう。
高性能な窓は、家全体(窓30㎡・20箇所程度)で約50~60万円程度の追加費用が見込まれることもあり、初期費用がかかるのは事実です。
▼家全体(窓30㎡・20箇所程度の場合)の追加費用
窓のグレード | 主な特徴(例) | 一般的な窓からの追加費用目安 |
---|---|---|
一般的な窓 | アルミサッシ、複層ガラス | 基準 |
エムズアソシエイツ標準 | 樹脂サッシ、Low-E複層ガラス(アルゴンガス入) | 約50万円~60万円程度 |
さらに高性能な窓 | トリプルガラス、高断熱フレームなど | エムズ標準仕様より+30万円 |
上記はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は窓の大きさ、数、メーカー、具体的な製品グレードによって大きく変動します。正確な費用は必ず見積もりでご確認ください。
「やっぱり高いな…」と感じるかもしれませんが、ここで注目していただきたいのが、長期的なランニングコストの削減効果です。
高性能窓を導入することで、冷暖房効率が大幅に上がり、毎月の光熱費を削減できます。
例えば、年間で3万円の光熱費が削減できたとすれば、20年で60万円となり、初期投資分を回収できる計算になります。
さらに、以下のようなメリットも期待できます。
太陽光発電で、光熱費をさらに削減。
初期費用回収後は、毎年の光熱費が純粋な節約に。
冷暖房設備の負担減で、エアコンなども長持ち。
そして、一年中続く心地よい暮らしというプライスレスな価値。
お金だけでなく、快適という付加価値を、一年間で365日毎日享受できるのが一番の魅力です。
熱い寒いのストレスから解放される期間が20年以上続くとなれば、プライスレスですが大きな価値となるはずです。
また、パッシブデザインで建物の向きや庇などをしっかり計画すれば、全ての窓を高価で高性能なトリプルガラスする必要はありません。
むしろ、冬の日差しを取り込みたい南面など、場所によっては高性能なペアガラスの方が適していることもあります。
エムズアソシエイツでは、お客様のご予算やライフプランを丁寧にお伺いした上で、初期費用と将来的なメリットのバランスを考慮し、最適な窓の仕様をご提案しています。
単に「高い窓」をおすすめするのではなく、その投資が将来どのような価値を生み出すのかを具体的にお伝えし、ご納得いただいた上で家づくりを進めていくことを大切にしています。
国や自治体では、省エネ性能の高い住宅の取得やリフォームに対して、様々な補助金制度を用意しています。
補助金制度名(例) | 概要 |
---|---|
先進的窓リノベ2025事業 | 既存住宅の窓を高断熱窓へ改修する工事に対して補助。性能グレードに応じ、一戸あたり最大200万円の補助が受けられる場合も。 |
子育てエコホーム支援事業 | 子育て・若者夫婦世帯中心に、省エネ住宅の新築取得や省エネ改修(窓断熱等)を支援する国の事業。新築は最大100万円/戸など。(リフォームは他世帯も対象だが補助額が異なる場合あり) |
GX志向型住宅 | 最大160万/戸。ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する脱炭素志向型の住宅です。 |
自治体独自の補助金 | お住まいの都道府県や市区町村が独自に設けている省エネ改修などへの助成制度。 |
税制優遇措置 |
窓を含む断熱改修を行うと、固定資産税の減額や住宅ローン減税の優遇が受けられる場合がある。 |
これらの制度を上手く活用すれば、初期費用を大幅に抑えることができます。
補助金制度は、予算の上限に達し次第終了したり、年度によって内容が変更されたりすることが多いため、常に最新の情報を確認しましょう。
ここまで「窓」の性能に焦点を当ててきましたが、本当に快適な家を実現するには、窓だけでなく家全体の断熱・気密性能を高めることがとても大切です。
どんなに高性能な窓も、家全体がしっかり断熱・気密されていなければ、その効果は半減してしまいます。
より高い快適性を追求するためには、家全体をトータルで考えなければいけません。
「穴の開いたバケツ」を想像してみてください。
どんなに良い蓋(窓)をしても、バケツの側面(壁・屋根・床など)に穴が開いていれば水は漏れてしまいます。
家も同じで、窓だけ高性能でも、他の部分の断熱性や気密性が低ければ、熱はそこから逃げたり入ってきたりしてしまいます。
真に快適で省エネな家のためには、窓、壁、屋根、床、基礎といった建物全体を高性能な断熱材で隙間なく包み込み、高い気密性を確保することが重要です。
その上で窓の性能を組み合わせることで、相乗効果が生まれ、少ないエネルギーで一年中快適に過ごせるようになります。
私たちエムズアソシエイツは、建物全体がまるで「魔法瓶」のように、外気の影響を受けにくく、快適な室温を保てる家づくりを目指しています。
そのため、窓の性能はもちろん、以下のような見えない部分にもこだわっています。
基礎断熱 |
床下も室内と捉え、基礎からしっかり断熱。シロアリ対策も万全です。 |
---|---|
屋根・天井の断熱 | 一般的な天井断熱に加え、エムズアソシエイツでは「桁上断熱」も採用。小屋裏の温度環境を安定させ、夏の暑さや冬の寒さを和らげます。 🔗屋根・天井・桁上断熱について詳しくはこちら |
壁の断熱・気密 | 壁の中の結露を防ぎ、断熱材の性能を長持ちさせる工夫をしています。 🔗壁面の断熱について詳しくはこちら 🔗断熱工法と付加断熱について詳しくはこちら |
高い気密性の確保 |
全棟で気密測定(C値測定)を実施し、C値0.08~0.4㎠/㎡という高い気密性能を確保しています。(平均C値=0.245) |
こうした一つひとつの積み重ねが、家全体の断熱性能を示すUA値(外皮平均熱貫流率)の非常に高いレベルにつながっています。
窓の性能は、こうした家全体の高い性能があってこそ最大限に活かされるのです。
ここまで、窓の断熱性能がいかに大切か、そして単に高性能な窓を選ぶだけでなく、太陽の光や熱を上手にコントロールする設計や家全体のバランスがいかに重要かをお伝えしてきました。
風通しやプライバシーまで考えた窓選び、そして私たちエムズアソシエイツが岐阜で実践する方位別のガラス使い分けなど、具体的な工夫をご理解いただけたかと思います。
私たち株式会社エムズアソシエイツは、岐阜で「高気密・高断熱」と自然素材にこだわった家づくりを追求しています。
確かな性能(過去実績 UA値0.3台、C値0.2台など)と、お客様一人ひとりの「本当に快適な暮らし」を大切にする。
それが私たちの家づくりです。
「我が家に最適な窓の計画は?」「エムズの家づくりをもっと知りたい」と思われたら、ぜひ岐阜市のモデルハウスで快適さを体感してください。
未来の快適な暮らしへの第一歩を、私たちがお手伝いします。
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ファーストプランは「設計のお試しプラン」。
契約前から設計士が直接対応し、平面図(間取り図)、CGパース、1/100スケールの精密な模型をご提供します。さらに、外構工事や細かな備品まで含めた詳細な見積書を作成し、消費税を含めた最終的な引渡し価格を明確に把握できます。
2025.06.19
2025.05.21
2025.05.20
2025.04.14
2025.04.11
2025.04.11