2025.05.21
ヒートショック予防に暖房が不要?「温度差」を生む日本の家の“弱点”とは

投稿日:2025.01.31 最終更新日:2025.03.27
新築やリフォームを検討する際、断熱材選びは家の快適性や省エネ性能を大きく左右する重要なポイントです。
しかし、断熱材には様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットが謳われ、情報が溢れています。
「断熱材は、結局どれが本当に良いの?」
という疑問はよくいただく質問です。
そこでこの記事では、超高気密高断熱を実現しているエムズアソシエイツが、断熱材を選んだ経緯を踏まえて、断熱材の種類と特徴、メリット・デメリットも分かりやすくご紹介します。
さらに、エムズアソシエイツは、どんな点を重視し、どんな断熱材を選んだのか、その判断基準も詳しく解説します。
エムズアソシエイツ代表の松原が、Youtubeでも断熱材について解説しています!
プロフィール:
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。
保有資格:
日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員
目次
ここでは、最適な断熱材を選ぶための基礎知識として、まず、断熱材の働きとその重要性について解説します。
断熱材とは、熱の伝導を抑えることで、建物内外の温度差を保つ役割を果たす材料です。
熱は、温度の高い方から低い方へ移動する性質があります。
断熱材は、この熱の移動を妨げることで、室内の温度を一定に保ち、冷暖房効率を高める効果があります。
断熱性能は、「熱伝導率」という指標で表されます。
熱伝導率とは、物質の熱の伝わりやすさを示す値で、数値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能が高いことを意味します。
例えば、熱伝導率が0.03W/(m・K)の断熱材は、0.05W/(m・K)の断熱材よりも断熱性能が高いと言えます。
「断熱性能等級」という言葉、最近よく耳にするけど、実際どういうものかよくわからない…という方も多いのではないでしょうか。 新築を計画中の方や、今の住まいをより快適にしたい方にとって、断熱性能は見逃せないポイントです。 特に2025年以降は、断熱性能等級4以上が義務化される流れで、住宅の省エネ基準
断熱材は、その主原料によって大きく「繊維系」「発泡プラスチック系」「その他」の3種類に分類されます。
分類 | 特徴 | 代表的な断熱材 |
---|---|---|
繊維系 | 空気を繊維の間に閉じ込め、安価で扱いやすい 防音性も高いが、湿気吸収に注意 |
グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー |
発泡プラスチック系 | 軽量で断熱性能が高い 火災時に燃焼・有毒ガスリスクがある |
ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム |
その他 | 環境負荷が少ない天然素材 価格が高めで施工にやや手間がかかる |
羊毛、木質繊維 |
繊維系断熱材には、グラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどが含まれます。これらは非常に細い繊維の間に空気の層を形成し、熱の伝わりを抑えるしくみで断熱性能を発揮します。
発泡プラスチック系断熱材は、プラスチックを発泡させて作るため軽量で扱いやすく、高い断熱性能を備えています。代表的な例として、ウレタンフォームやポリスチレンフォームがあります。
羊毛や木質繊維などの天然素材を原料とする断熱材も存在します。環境への負荷が少なく、調湿性に優れるのが特徴です。
断熱材は、その主原料によって大きく「繊維系」「発泡プラスチック系」「その他」の3種類に分類されます。
近年、住宅用としてよく使われている断熱材は、主に以下の5つです。
各断熱材の説明に入る前に、これらの断熱材を比較表を用いて表してみました。
ここでは、近年よく使われる5つの断熱材の性能・特徴を一覧表で比較します。
吹付ウレタンフォーム | セルロースファイバー | プラスチックパネル系 | 袋入りグラスウール | 高性能グラスウール | |
---|---|---|---|---|---|
コスパ | △ | △ | × | ○ | ○ |
断熱性能 | ◎ | ○ | ◎ | △ | ○ |
耐久性 | 不明 | ○ | 不明 | ◎ | ◎ |
可変性(リフォーム) | × | × | ○ | ○ | ○ |
透湿性 | △ | ◎ | × | ◎ | ◎ |
雨漏れ発見 | × | ○ | × | ○ | ○ |
防音・吸音性 | ○ | ◎ | △ | ○ | ○ |
燃焼・可燃 | △ | △ | × | ◎ | ◎ |
環境配慮 | △ | ◎ | △ | ○ | ○ |
地震時リスク | × | △ | × | △ | ◎ |
白蟻リスク | × | ◎ | × | ◎ | ◎ |
◎:非常に優れている
○:優れている
△:やや劣る/注意点あり
×:劣る/リスクが高い
不明:情報不足・データ不足
※ 上記は一般的な評価であり、製品によって性能は異なります。
それでは、上記の比較表で取り上げた、近年よく使用される断熱材とその他の断熱材(ロックウール、ポリエチレンフォーム)について、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
各断熱材のより詳細な説明については、別記事で詳しく解説する予定です。
吹付ウレタンフォームは、現場でウレタンを吹き付けて発泡させるタイプの断熱材です。
高い気密性と断熱性を持ち、専門業者による施工で品質が安定しやすい点がメリットです。
一方、火災時のリスクや、配線等の変更の難しさ、湿気を通しにくい点、耐久性への懸念などがデメリットとして挙げられます。
断熱材の選定って難しいですよね。 プロでもいろいろな断熱材がありすぎて、何が良いのかはっきり言えない! なんて方もいらっしゃるかと思います。 なかでも最近特によく耳にするのが、現場で吹き付けるウレタンフォーム断熱材ではないでしょうか。 高い断熱性能を持つことで知られており、高気密高断熱住
セルロースファイバーは、新聞古紙などをリサイクルして作られた環境に優しい断熱材です。
断熱性に加え、調湿性や防音・吸音性にも優れています。
しかし、沈下の可能性や、配線変更の難しさ、高い気密性を確保しづらい点がデメリットです。
数ある断熱材の中の一つとして「セルロースファイバー」がありますが、初めて聞いた、または、聞いたことはあるけれど詳しくは知らない、という方もいるかもしれません。 新聞紙などをリサイクルして作られた、環境に優しい断熱材として知られていますが、実際のところはどうなのでしょうか? セルロースファイバーに
プラスチックパネル系は、硬質の発泡プラスチックを板状に成形した断熱材で、非常に高い断熱性能を誇ります。軽量で加工しやすい点もメリットです。
ただし、火災時の燃えやすさや、湿気を通しにくい点、地震時の破損リスク、コストの高さが課題となります。
断熱材選びは、家づくりの「快適さ」と「省エネ」を大きく左右する、大切なポイントです。 今回は、この中でも高い断熱効果がある「発泡プラスチックパネル系断熱材」について紹介しようと思います。 こんなお悩みについて解決します。 発泡プラスチックパネル系断熱材ってどんなも
袋入りグラスウールは、ガラス繊維を袋に詰めた、最も一般的な断熱材の一つです。コストパフォーマンスと耐火性に優れています。
しかし、湿気に弱く、施工精度によって性能が左右され、経年で沈下する可能性もあります。
今回は、これまで解説してきた数ある断熱材の中でも、超高気密高断熱を実現しているエムズアソシエイツが自信を持って推奨する「高性能グラスウール」について紹介します。 グラスウールの性能ってどうなの? グラスウールは気密性が高くないって本当? グラスウールはあまり使わない方がいい断熱材
高性能グラスウールは、従来のグラスウールより繊維が細く密度が高いため、高い断熱性と耐久性を持ちます。また、火災に強く、透湿性にも優れています。
ただし、施工には高い精度が求められ、水濡れ対策も必要です。
今回は、これまで解説してきた数ある断熱材の中でも、超高気密高断熱を実現しているエムズアソシエイツが自信を持って推奨する「高性能グラスウール」について紹介します。 グラスウールの性能ってどうなの? グラスウールは気密性が高くないって本当? グラスウールはあまり使わない方がいい断熱材
ロックウールは、鉱物を主原料とする断熱材で、断熱性、耐火性、撥水性、耐久性に優れています。
また、防音・吸音性も高いのが特徴です。
ただし、グラスウールに比べると、コストが高く、やや重い点がデメリットです。
ポリエチレンフォームは、ポリエチレン樹脂を発泡させた断熱材で、高い断熱性と耐水性を持ちます。軽量で加工しやすいのも利点です。
一方、コストが高く、熱や紫外線に弱い点、火災時の安全性に課題がある点がデメリットです。
ここからは、断熱性能、価格、防火性能、環境性能といった、特に重視されることが多い4つの視点から、それぞれおすすめの断熱材を紹介していきます。
ご自身の優先順位と照らし合わせながら、最適な断熱材を見つけるための参考にしてください。
住宅の断熱性能を最も重視するなら、熱伝導率が低く、断熱性能に優れた「ウレタンフォーム」や「プラスチックパネル系」などの発泡プラスチック系断熱材がおすすめです。
これらの断熱材は、繊維系断熱材や無機系断熱材と比較して、同じ厚みでより高い断熱性能を発揮します。
特に、現場で吹き付けて施工する「吹付けウレタンフォーム」は、細かい隙間にも充填できるため、高い気密性を確保できます。
これにより、断熱材の性能を最大限に引き出し、冷暖房効率を高めることが可能です。
ただし、発泡プラスチック系断熱材は、他の断熱材に比べて価格が高い傾向にあります。
また、火災時の安全性や経年劣化による性能低下などの懸念点もあるため、これらの点を考慮して選ぶ必要があります。
初期費用を抑え、価格を重視するなら、「袋入りグラスウール」や「高性能グラスウール」などの繊維系断熱材がおすすめです。
これらの断熱材は、発泡プラスチック系断熱材に比べて安価であり、広く普及しています。
特に「袋入りグラスウール」は、他の断熱材と比べて価格が安く、コストパフォーマンスに優れています。
ただし、袋入りグラスウールは湿気に弱く、施工精度によって性能が左右されやすいため、注意が必要です。
より高い断熱性能と耐久性を求める場合は、「高性能グラスウール」も検討しましょう。
火災時の安全性を考慮し、防火性能を重視する場合は、「グラスウール」や「ロックウール」などの無機質系断熱材がおすすめです。
これらの断熱材は、不燃性であり、火災時の延焼リスクを低減できます。
特に「ロックウール」は、主原料が岩石であるため、燃えにくく、熱に強いという特長があります。
また、水を弾く性質(撥水性)があるため、湿気による断熱性能の低下が少ないこともメリットです。
ただし、ロックウールはグラスウールと比較して重く、施工性にやや劣る点には注意が必要です。
環境性能を重視する場合は、リサイクル素材を使用した「セルロースファイバー」がおすすめです。
これらの断熱材は、製造から廃棄までのライフサイクル全体における環境負荷が小さいことが特徴です。
「セルロースファイバー」は、新聞古紙などのリサイクル素材を原料としており、環境に優しい断熱材として注目されています。
また、木質繊維が湿気を吸収・放出するため、調湿効果が高く、結露を防ぎやすいこともメリットです。
ただし、他の断熱材に比べて価格が高く、専門業者が少ないため、施工できる業者が限られるというデメリットもあります。
エムズアソシエイツでは、高性能グラスウールを推奨しています。
それは、ただ断熱性能が高いというだけでなく、日本の住環境に最適な、長持ちする家づくりのための、最もバランスの取れた選択であると考えるからです。
私たちは、断熱材は単に断熱性能だけでなく、長期的な視点で住まいの安全、快適さ、そして環境への優しさにもつながる大切な要素だと考えています。
近年、施工が簡単、管理が楽、といった工務店側の都合を優先した商品も多く、本当に施主様のためになるのか、疑問に感じることも少なくありません。
私たちは、単なる断熱性能、あるいは目先のコストや効率だけでなく、住まう人の健康、安全性、快適性、そして環境への影響を、長期的な視点で考えることが重要であると考えています。
安易な施工は、シックハウス症候群のような健康被害を引き起こすリスクもあります。
エムズアソシエイツは、そうした家づくりの経験から、断熱性能は大前提として、以下の点を重視し、断熱材を選定しています。
具体的には以下の点です。
上記の考えに基づき、私たちは高性能グラスウールを推奨しています。
その理由は、高性能グラスウールが、耐久性、透湿性、可変性、安全性、耐震性、そしてコスト面で、総合的に優れた性質を持っているからです。
特に、無機質のガラス繊維でできているため、経年劣化が少なく、湿気を通しやすい点は、日本の住宅に最適です。
また、火に強く、地震の揺れにも柔軟に対応できる点も、安心できるポイントです。
さらに、施工においては、配線と断熱材を分離するなど、性能を最大限に引き出す工夫を徹底しています。
「なぜ、高性能グラスウールが優れているのか?」「具体的にどのように施工するのか?」といった、より詳しい情報については、下記の記事で詳しく説明しています。
今回は、これまで解説してきた数ある断熱材の中でも、超高気密高断熱を実現しているエムズアソシエイツが自信を持って推奨する「高性能グラスウール」について紹介します。 グラスウールの性能ってどうなの? グラスウールは気密性が高くないって本当? グラスウールはあまり使わない方がいい断熱材
断熱材の性能を最大限に引き出すためには、「断熱工法」も重要です。どんなに高性能な断熱材を選んでも、施工が不適切であれば、十分な断熱効果は得られません。
断熱材の施工方法には、主に「充填断熱」「外張り断熱」「付加断熱」の3種類があります。
それぞれの施工方法にはメリット・デメリットがあり、住宅の構造や断熱材の種類によって最適な方法は異なります。
工法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
充填断熱 | 比較的安価、多くの住宅で採用 | 隙間なく充填するのが難しく、施工精度によって性能が左右される |
外張り断熱 | 断熱材が途切れず高断熱、壁体内結露対策に有効 | 充填断熱に比べてコストが高い |
付加断熱 | 充填断熱と外張り断熱のメリットを併せ持つ、より高い断熱性能 | コストが最も高い |
どの工法を選ぶかは、住宅の構造、予算、求める性能などを考慮して、総合的に判断する必要があります。
住宅の断熱性能を高めることは、快適な住環境を実現し、光熱費を削減する上で非常に重要です。 しかし、「断熱」と一言で言っても、その工法は様々です。 中でも主要なのが、壁の中に断熱材を充填する「充填断熱」と、建物の外側から断熱材を張り付ける「外張り断熱」です。 それぞれにメリット・デメリットがある
ここでは、断熱材についてよくある質問とその回答をQ&A形式でご紹介します。
A1: エムズアソシエイツでは、新築では断熱材はグラスウールを使用しますが、リフォームでは気密施工のしやすいフェノールフォームの断熱材を使用します。(屋根断熱など、高性能グラスウールの厚みを確保するのが難しい場合にも使用します)
フェノールフォームの断熱性能はグラウスールの倍ほどの断熱性能がありますので、厚みはグラスウールの半分で済みます。
A2:一概に「このメーカーがおすすめ」とは言えませんが、ここでは、代表的な断熱材メーカーと、その特徴をいくつかご紹介します。
ただし、断熱材選びで最も大切なのは、メーカー名ではなく、製品の性能や特徴です。各メーカーが提供する製品の性能や特徴をよく比較し、ご自身のニーズに最適な断熱材を選ぶことが大切です。
A3: 一般的に発泡プラスチック系(ウレタンフォームなど)は熱伝導率が低く高性能ですが、グラスウールやロックウールでも厚みや施工が適切なら十分な性能を得られます。
A4: グラスウールやロックウールなど無機繊維系は長期間劣化しにくいとされていますが、湿気を含むと性能が落ちる場合があります。発泡系は経年収縮することもあるため、施工方法とメンテナンスが重要です。
A5: 断熱材の種類ごとの専門知識を持ち、施工事例が豊富な会社を選ぶのがおすすめです。複数の業者から見積もりを取り、工事内容や費用を比較検討しましょう。また、工事後の保証やアフターサービスの有無も確認しておくと安心ですよ。
A6: ご家族のライフスタイルや予算、お住まいの地域の気候などを踏まえ、複数の断熱材のメリット・デメリットを、私たちのような専門家と一緒に検討するのがおすすめです。
それぞれの家庭に合った、コストと性能のバランスが取れたプランをご提案します。
A7: 発泡プラスチック系は水分を含みにくいというメリットがあります。
しかし、繊維系でも、きちんと防湿・気密施工を行えば、結露のリスクを最小限に抑えられますよ。
断熱材の種類だけでなく、施工品質が大きく影響することを覚えておいてくださいね。
この記事では、断熱材の種類や特徴、メリット・デメリットを解説しました。
もう一度整理してみましょう。
私たちエムズアソシエイツでは、数ある断熱材の中から、高性能グラスウールを推奨しています。それは、日本の住環境に適した性能バランスと、長期的な安心感を兼ね備えているからです。
もし断熱材選びで分からないことがあれば、ぜひ一度、エムズアソシエイツにご相談ください!
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ファーストプランは「設計のお試しプラン」。
契約前から設計士が直接対応し、平面図(間取り図)、CGパース、1/100スケールの精密な模型をご提供します。さらに、外構工事や細かな備品まで含めた詳細な見積書を作成し、消費税を含めた最終的な引渡し価格を明確に把握できます。
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