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窓の採光で失敗しない、4つの考え方。パッシブデザインで採光をもっと効果的に

家づくりにおける窓の「採光」。

これは、多くの方が向き合うことになる重要なテーマです。

「明るく開放的なリビングにしたい」と願いつつも、「窓を大きくすると夏は暑く、冬は寒くなるのでは…」という性能への不安はつきものです。

ですが、心地よさと性能、どちらかを諦める必要はありません。

本当の答えは、光・断熱・そして太陽の恵み(日射)を、設計でコントロールする「パッシブデザイン」という考え方にあります。

この記事では、パッシブデザインの考え方に基づき、心地よい家を実現するための具体的なヒントを解説します。

この記事でわかること
  • 採光計画の2つの失敗パターン
  • 光と熱を設計でコントロールする、パッシブデザインの基本
  • 夏の強い日差しを遮り、冬の光だけを取り込む「軒(のき)」のすごい力
  • 実は間違い?「夏は窓を開けて通風」の思い込み
この記事を書いた人
松原 保嗣

【プロフィール】
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。
20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。
自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。
【保有資格】
日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員

窓の採光計画は失敗しやすい、2つの後悔パターン

窓からどのように光を採り入れるか。

この「採光計画」は、家の心地よさを左右する一つの重要な要素です。

しかし、ただ明るくすれば良い、あるいは断熱のために窓を減らせば良いという単純な話ではありません。

ここでは、採光計画でよくある2つの失敗パターンを通じて、なぜ性能と快適性の両立が難しいのか、その根本原因を解説します。

失敗例1:「大きな窓=明るくて快適」とは限らない?

「リビングは、大きな窓で開放的に」 「吹き抜けで、光が降り注ぐ空間に」

こうした理想を持つ方は多いでしょう。

しかし、その理想を叶えるには、設計上の工夫がとても大切になります。

問題は、窓の大きさや数そのものではありません。

その土地の気候風土や、季節ごとの太陽の動きといった要素を計算せずに窓を計画すると、せっかくの大きな窓が、単に「熱の出入り口」として機能してしまうことがあります。

その結果、夏は日差しが入り込みすぎて室温が上がり、冬は窓際から冷気が伝わって足元が寒くなるなど、光熱費がかさむだけでなく、快適に過ごしにくい家になってしまうのです。

失敗例2:「性能」を優先し、「心地よさ」を見失った家に

近年の住宅業界では省エネ意識の高まりから、「高気密・高断熱」が標準的な考え方になっています。

その中で、断熱性能(UA値)という数値を高めるために、窓を減らすという選択肢に目が向きがちですが、そこには別の側面もあります。

現代の設計技術であれば、窓が少なくても明るさを確保することは可能です。

しかし、家づくりの目的は、高い性能の数値を得ることだけでしょうか。

 

例えば、窓を減らすと、冬の暖かい日差しが室内に入りにくくなります。

太陽の光は、部屋を明るくするだけでなく、室内を暖めてくれる「日射取得」という大切な役割も担っています。

この自然の恵みを受けにくい家は、高性能であっても、どこか寒々しく感じられ、暖房に頼る時間も長くなるかもしれません。

何より、外とのつながりが感じにくい家は、季節の移ろいや自然の心地よさを味わう機会が減ってしまいます。

それは、「家族が毎日を楽しく快適に過ごす」という、家づくりの大切な目的から、少し離れてしまうのかもしれません。

採光のベストアンサーは「パッシブデザイン」という考え方

 

では、どうすれば「明るさ」と「快適性」を両立できるのでしょうか。

その答えは、部分的な対策ではなく、家全体の設計思想にあります。

本記事の結論として、「光(採光)」、「断熱」、そして「日射(自然エネルギーの活用)」という3つの要素を一体で考える”パッシブデザイン”の重要性を解説します。

パッシブデザインとは?光と熱を設計でコントロールする技術

パッシブデザインとは、エアコンや暖房といった機械設備(アクティブ)に可能な限り頼らず、建物の工夫によって快適な室内環境をつくる設計思想のことです。

その基本はとてもシンプル。

「夏は日差しを遮って涼しく過ごし、冬は日差しを積極的に取り込んで暖かく過ごす」。

この、昔から日本の家づくりで行われてきた知恵を、現代の技術と科学的な知見に基づいて、より高いレベルで実現しようとする考え方です。

先ほど挙げたような失敗を根本から解決する、家づくりの根幹となる思想といえます。

なぜ「光・断熱・日射」のバランスが重要なのか

なぜ、「光」「断熱」「日射」の3つをバランス良く考えることが重要なのでしょうか。

  • 「光(採光)」だけを追求すれば、夏の暑さや冬の寒さといった「快適性」が損なわれます。
  • 「断熱」だけを追求すれば、冬の暖かな日差しや、春秋の心地よさといった「豊かさ」が損なわれます。

この2つの関係を調整し、両立させてくれるのが「日射取得・遮蔽」という視点です。

季節に応じて太陽のエネルギーをコントロールするこの視点が加わることで、初めて「光」と「断熱」のメリットを最大限に引き出すことができます。

これら3つはトレードオフの関係ではなく、すべてを高次元で満たすことが可能であり、それこそが、本当に心地よい家づくりの答えなのです。

窓の採光計画を成功させる4つの基本(配置・方角・種類・大きさ)

パッシブデザインの重要性をご理解いただけたところで、次はその考え方を実際の設計に落とし込むための、4つの基本ポイントを解説します。

心地よい光環境をつくるには、窓の「配置」や「大きさ」といった計画から始まります。

ここでは、それぞれのポイントについて、具体的なエムズアソシエイツの施工事例を交えながら分かりやすくご紹介します。

①窓の「配置」で光と風の通り道をつくる

光を部屋の奥まで届けるためには、窓の高さが重要です。

例えば、低い位置にある窓よりも、天井近くの高い位置にある窓(ハイサイドライト)の方が、光をより遠くまで導くことができます。

また、一つの大きな窓を設けるよりも、複数の窓を対角線上にリズミカルに配置する方が、部屋全体に光が回りやすくなります。

もちろん、隣家の窓の位置や周辺環境を読み解き、プライバシーを確保しながら光と風の通り道を設計することも必要です。

②窓の「方角」ごとの光の特性を知る

方角によって、光の入り方や性質は大きく異なります。

それぞれの特性を理解し、部屋の用途に合わせて計画することが大切です。

南向き 冬は室内の奥まで暖かい日差しが差し込み、日射取得にもっとも効果的です。 一方で、夏は日差しが強すぎるため、後述する軒(のき)や庇(ひさし)で日射を遮る工夫が必須となります。
東向き 気持ちの良い朝日を取り込めるため、寝室や朝食をとるダイニングなどに向いています。 夏の午後は室温が上がりにくいというメリットもあります。
西向き 夏の西日は非常に強く、室温を上昇させる大きな原因となります。 壁の面積を増やす、窓を小さくする、遮熱性能の高いガラスを選ぶなどの対策が必要です。
北向き 一日を通して、安定した柔らかで落ち着いた光が得られます。 書斎やアトリエなど、集中したい空間に向いています。 近年の住宅は断熱性が高いため、昔のように「北側の部屋は寒い」と過度に心配する必要はありません。

③窓の「種類」を目的別に使い分ける

窓にはさまざまな種類があり、それぞれデザイン性だけでなく、断熱性や気密性、風の取り込み方などが異なります。

引き違い窓 もっとも一般的ですが、構造上すき間が生まれやすく、気密性・断熱性の面では他の窓に劣ります。
すべり出し窓(縦/横) 開いた窓ガラスが風をキャッチし、効率的に室内に風を呼び込みます。 また、閉めた際の気密性が高く、高性能住宅で多く採用されます。
FIX窓(はめ殺し窓) 開閉できないため通風は望めませんが、気密性・断熱性が非常に高く、景色を切り取る「ピクチャーウィンドウ」として採光や眺望を重視する場所に適しています。

重要なのは、これらの窓を適材適所で使い分けること。

例えば、リビングの大きな窓は眺望の良いFIX窓にし、通風は両脇の縦すべり出し窓で確保するといった組み合わせで、それぞれのメリットを最大限に活かすことができます。

④窓の「大きさ」はプライバシーと両立させる

大きな窓は開放感があり魅力的ですが、断熱性や耐震性、そしてプライバシーの確保といった課題も伴います。

特に住宅密集地では、隣家からの視線は気になるもの。

そんなときに活躍するのが、視線が届きにくい高い位置に設ける「高窓(ハイサイドライト)」や、足元に設ける「地窓(ローサイドライト)」です。

これらの窓は外部からの視線を遮りつつ、安定した光を室内に届けてくれます。

また、細長いスリット窓をリズミカルに配置すれば、プライバシーを守りながらデザイン性の高い外観を演出することもできます。

採光と熱を巧みにあやつる、パッシブデザインの具体的な工夫

採光の基本ポイントを押さえた上で、ここではさらに一歩進んだ、設計の力で光と熱を巧みにコントロールするパッシブデザインの具体的な手法をご紹介します。

特に、日本の気候風土において重要な「軒(のき)」と「庇(ひさし)」の役割や、季節に合わせた窓との付き合い方について、プロの視点から解説します。

軒(のき)や庇(ひさし)で、夏の強い日差しを遮り、冬の光を取り込む

夏の太陽は高い位置から、冬の太陽は低い位置から差し込む。

この太陽の動きの違いを利用して、日差しをコントロールするのが「軒(のき)」や「庇(ひさし)」です。

深く軒を出すことで、太陽高度が高い夏の日差しはしっかりと遮り、室温の上昇を防ぎます。

一方で、太陽高度が低い冬には、暖かい日差しを室内の奥まで取り込むことができます。

この「夏の遮熱」と「冬の集熱」を自動的に行ってくれる軒や庇は、いわば”自然のブラインド”。

エアコンだけに頼らず、最小限のエネルギーで快適な室内環境を保つための、もっとも効果的でシンプルな設計手法です。

この軒の出の長さを、その土地の方角や日照時間を計算して最適に設計することが、パッシブデザインの要(かなめ)となります。

季節に合わせた窓の開閉と、夏の通風で注意したいこと

「夏は窓を開けて、風を通して涼む」

これは、昔ながらの日本の夏の過ごし方ですが、現代の高気密高断熱住宅では、必ずしも正解とはいえません。

岐阜のように高温多湿な地域では、真夏に窓を開けると、涼しい風と同時に、屋外の湿気も大量に室内に入ってきてしまいます

結果、室内の湿度が上がり、ジメジメとした不快な状態になることも。

そのため、春や秋といった気候の良い季節には、積極的に窓を開けて自然の風を楽しみ、真夏の本当に暑く湿度の高い日には、むしろ窓を閉め切って日射を遮蔽し、エアコンで除湿・冷房する方が、はるかに快適かつ省エネに過ごせるのです。

季節の特性を理解し、窓や機械設備を使い分ける。

これも、現代の家づくりにおけるパッシブデザインの一つと言えます。

天窓(トップライト)は効果的?メリットと知っておくべきリスク

「プライバシーは守りたい、でも部屋は明るくしたい」そんなときによく採用されるのが、「天窓(トップライト)」です。

壁面の窓に比べて約3倍の採光効果があるともいわれ、暗くなりがちな家の真ん中や北側の部屋を明るくしてくれます。

ただし、とても便利な一方で、いくつか知っておいてほしい注意点もあります。

屋根に直接設置するため、夏は強烈な日差しで室温が上昇しやすく、冬は熱が逃げやすいというデメリットがあります。

また、雨音が響いたり、雨漏りのリスクやメンテナンスの難しさも考慮しなくてはなりません。

もし天窓を採用するのであれば、遮熱・断熱性能の高い製品を選び、信頼できる施工会社に依頼するなど、メリットとリスクを十分に理解した上で判断することが大切です。

性能は当たり前。その先にある「心地よい暮らし」を設計する

ここまで、性能と快適性を両立させるための具体的な設計手法について解説してきました。

私たちが本当に目指しているのは、数値で表せる「性能」の先にある、「心地よい暮らし」そのものです。

 

「高気密高断熱は、一年のうち半分くらいしか価値がない!」

 

高気密高断熱の家づくりに誰よりもこだわってきた私たちがこんなことを言うのもなんですが。

いくら家の性能が良くても、春や秋の気持ちのいい季節に窓を開けて風を感じられない…。

それは、本当の意味で「暮らしが豊か」だと言えるでしょうか?

性能の数字だけを追いかけて、暮らしの心地よさを忘れてしまう家づくりはしたくない。

それが、この言葉に込めた意味です。

 

夏涼しく冬暖かいのは、もはや当たり前。

その性能を土台とした上で、春や秋には窓を開け放ち、心地よい風や庭の緑、季節の移ろいを肌で感じられる。

そんな、自然とつながる設計があって初めて、本当に価値のある家が完成すると、私たちは考えています。

お客様が本当に求めているのは、「高性能な住宅」というスペックではなく、「家族との毎日を楽しく、健康に、そして快適に過ごせる暮らし」そのものであるはずです。

まとめ:性能も心地よさも諦めない。エムズと考え、実現する採光計画

今回は、窓の採光で後悔しないための本質的な考え方について解説しました。

単に明るさを求めたり、性能のために窓を減らすのではなく、「光・断熱・日射」を巧みに操るパッシブデザインこそが、一年中心地よい家づくりの鍵です。

  • 最適な採光は「光・断熱・日射」のバランスで決まる
  • 窓は「配置・方角・種類・大きさ」の4つの基本で計画する
  • 軒や庇を活かし、季節の日差しをコントロールする
  • 性能だけでなく、暮らしの「心地よさ」を大切にする
 

私たちエムズアソシエイツは、まさにこの設計思想を追求しています。

「高性能なのは当たり前、その先にある心地よさ」を大切に、一棟一棟、その土地に最適な設計をご提案します。

この記事でご紹介した考え方を、私たちのモデルハウスでぜひ体感してみてください。

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