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「床下エアコンのデメリットは本当?」10年住んだ工務店社長が”本音”で答えます。

「床下エアコンって、結局どうなの?」

「全館空調や床暖房とどう違うの?」

家づくりで暖房について調べていると、必ず目にする「床下エアコン」。

でも、良い情報ばかりで、実際のところどうなのか、デメリットはないのか、気になりますよね。

実は、床下エアコンで後悔しないためには、仕組みやメリット・デメリットを正しく理解し、「やってはいけない選び方」を知っておくことが何よりも大切です。

この記事では、住宅のプロとして、そして「実際に自宅で10年近くも床下エアコンを使い続けている当事者」として、床下エアコンの真実を、リアルな経験とデータに基づいて本音でお話しします。

この記事でわかること
  • 床下エアコンの基本的な仕組みと、他の暖房との違い
  • 当事者が語る、リアルなメリットとデメリットの真実
  • 10年後も後悔しないための、やってはいけない選び方
  • 導入を成功させるために絶対に必要な家の性能
  • 実際に10年使って分かった、リアルな手入れや費用の実態

ネット上の情報に惑わされず、あなたにとって最適な暖房は何か、本質的な判断基準を手に入れてください。

この記事を書いた人
松原 保嗣

【プロフィール】
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。
20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。
自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。
【保有資格】
日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員

目次

【結論】エムズの家づくりでは「床下エアコン」を推奨しています

早速、私たちの結論からお伝えします。

私たちエムズアソシエイツは、「自然で心地よい空調で、将来も安心して使える。床下エアコンこそ、もっとも優れた暖房システム」と考えており、私たちの家づくりでは標準採用しています。

床下エアコンを選ぶことは、単に暖房器具を一つ決めるのとは、訳が違います。

ここでは、床下エアコンを採用(オプション仕様)し、自らも10年以上住み続けている「当事者」として、メリットだけでなく、デメリットやリアルなメンテナンスの実態まで、すべての情報を正直にお話ししたいと思います。

そして、10年、20年先に後悔のない家づくりを実現してもらいたいと思います。

まずは床下エアコンがどのような仕組みで、他の暖房とどう違うのかを詳しく見ていきましょう。

そもそも床下エアコンとは?仕組みと床暖房・全館空調との違い

まずは「床下エアコン」が一体どのようなものなのか、その基本的な仕組みから見ていきましょう。

混同されがちな床暖房や、比較検討されることの多い全館空調と、何が根本的に違うのかを解説します。

床下エアコンとは、一般的なエアコンを利用したシンプルな仕組み

床下エアコンは、その名の通り、床下にエアコンを設置して家全体を暖めるシステムです。

従来の壁や天井に設置されるエアコンとは違い、床下空間(基礎空間)を利用して空調を行います

この床下エアコンには、現在主に採用されているものとして大きく分けて3つの種類が存在します。

システム化された製品(ダクト式)  メーカーなどから一つの商品として販売されているタイプです。エアコン本体からダクト(配管)を床下に張り巡らせ、暖気や冷気を送り込みます。
床置き型エアコンの埋め込み 市販されている床置き型のエアコンを、そのまま床下に埋め込む形で設置する方法です。
壁掛け式エアコンの応用 もっとも一般的な家庭用壁掛けエアコンを、床下に設置する方法です。

私たちエムズアソシエイツでは、一般的な壁掛けエアコン(三菱製)を少し改造したものを、床下にダクトを5本ほど転がして空気を送るだけの非常にシンプルな構造を採用しています。

お客様のご要望で、床置き型エアコンを採用する場合もあります。

基礎(床下)全体が暖められると、その熱が床材を通してじんわりと室内に伝わり、さらに床に設けられた「ガラリ」と呼ばれる吹き出し口から暖かい空気がゆっくりと上昇することで、家全体が春の日だまりのような、ムラのない暖かさで満たされるのです。

もちろんエアコンの風が直接当たらないのも良いところです。

【比較】床暖房との違い:「床」ではなく「床下空間」を暖める

床下から暖めるという点で、床下エアコンはよく「床暖房」と混同されますが、その仕組みと効果は全く異なります。

最大の違いは、床暖房が床の「面」を直接暖めるのに対し、床下エアコンは床下の空間、つまり「体積」をまるごと暖める「空間暖房」であるという点です。

比較項目 床下エアコン 床暖房(温水式など)
暖め方 基礎空間を暖め、家全体を均一な温度に保つ「空間暖房」 床パネルを直接温め、足元から熱を伝える「直接暖房」
特徴 ・家全体の温度ムラが少ない
・風を感じず自然な暖かさ
・床自体は熱くならない(ほんのり暖かくなる程度)
・足元が直接暖かい(低温やけどに注意が必要)
・設置エリアが限定的
コスト 市販品を利用するため、導入・更新コストが比較的安い
エアコン(ヒートポンプ式)だからランニングコストも安い

専用設備のため、導入・更新コストが高額になる傾向
ランニングコストも比較的高額になる

メンテナンス 市販エアコンと同様の手入れ(フィルター掃除)で済む
5年~7年に一度クリーニングを推奨
定期的な不凍液の交換など、専門的なメンテナンスが必要
電気式の場合は特にメンテナンスは不要
その他 低温やけどのリスクが低い 高温設定の場合、低温やけどのリスクに注意が必要

床暖房の「足元が直接暖かい」という感覚は魅力的ですが、家全体の快適性や将来にわたるメンテナンスの容易さを考えると、床下エアコンに大きなメリットがあることがわかります。

また、床下エアコンは、床の表面自体が熱くなるわけではないため、一般的な床暖房で心配されるような低温やけどのリスクが低いのも特徴です。

【比較】全館空調(ダクト式)との違い:床下エアコンの方が「シンプル」

家全体を空調するという点では、「全館空調」も比較対象になります。

全館空調は、天井裏に大きな機械を設置し、各部屋にダクトを張り巡らせるタイプが一般的です。

また、1〜2畳ほどの専用の空調室に本体を設置し、そこから各部屋へダクトで送風するタイプもあります。

全館空調の仕組みを示す住宅断面図。空調機から各部屋へ均一に暖気や冷気を送り、上下階や床下まで空気を循環させる様子を矢印で表現。家全体を快適な温度に保つ省エネ住宅の空調システムイメージ。

壁や天井内にダクトを張り巡らせ、各部屋へ空気を送る

ここでの比較は、まず「仕組み」の違いに焦点を当てます。

全館空調が、家中に張り巡らされた複雑なダクトを通して各部屋に「送風」することで温度を管理するのに対し、床下エアコンは、建物の基礎というシンプルな空間そのものを利用して、家全体を「一括」で暖める、よりシンプルなシステムです。

この「複雑な専用設備」と「シンプルな仕組」という考え方の違いが、実は将来のメンテナンスコストや暮らしやすさに大きく関わってきます。

この点については、後のセクションでさらに詳しく掘り下げていきます。

床下エアコンのメリット・デメリットを当事者が正直に解説

床下エアコンの基本的な仕組みをご理解いただけたところで、次に具体的なメリットと、ネット上でよく語られるデメリットの「真実」について、私たちの経験から正直にお話しします。

メリット:1台で家中どこでも、温度ムラのない自然な暖かさ

1. 家中どこにいても、春のような暖かさ【温度のバリアフリー】

床下エアコン最大のメリットは、家全体(一階)の温度が均一になることです。

LDKだけでなく、普段は寒くなりがちなトイレや洗面所、廊下・玄関まで春のような暖かさで包み込みます。

この「温度のバリアフリー」は、冬場のヒートショックのリスクを大幅に減らし、家族みんなが安心して暮らせる環境をつくります。

2. 室内温度のムラが減り、不快な風が全くない、自然な心地よさ

通常の壁掛けエアコンでよくある「顔はのぼせるのに足元は寒い」「風が直接当たって不快」といったストレスが、床下エアコンには一切ありません。

床下からじわじわと暖かい空気が上がってくるため、まるでエアコンが動いていることさえ忘れてしまうほど、ムラのない自然で心地よい暖かさが得られます。

【解説】なぜ、壁掛けエアコンだと「頭はのぼせて足元が寒い」のか?

多くの方が冬に経験する「エアコンをつけているのに足元が寒い」という現象は、空気の物理的な性質が原因です。

暖かい空気は、熱気球のように軽くなって自然と天井付近へ上昇してしまいます。壁掛けエアコンは部屋の高い位置から温風を出すため、その暖かい空気は足元まで十分に届かず、天井に溜まってしまうのです。

その結果、断熱性の低い家では、床の表面温度が10℃しかないのに、天井付近は27〜28℃にも達するという深刻な温度差(温度ムラ)が生まれます。これが「頭はボーッとのぼせるのに、足元だけは冷える」という不快感の正体です。

ちなみに夏はその逆で、冷たく重い空気は上から下へ自然に降りるため効率的に部屋を冷やせますが、「足元だけが冷えすぎる」といった新たな温度ムラが発生することもあります。

3. 圧倒的にスッキリした空間デザイン

壁にエアコンや暖房器具がなくなることで、インテリアの自由度が格段に上がります。

余計な凹凸がないスッキリとした壁は、空間をより広く、美しく見せてくれます。

家具の配置に悩むこともありません。

4. 設置する「エアコンの台数」を減らせる

通常であれば「1部屋に1台」が基本のエアコンを、高性能な家であれば1階全体で1台場合によっては家全体で1台でまかなうこともできます。

その結果、設置するエアコンの総数を減らし、初期費用や将来の交換費用を抑えることにも繋がります。

よくあるデメリットは本当?プロが一つずつお答えします

床下エアコンを検討するうえで、誰もが気になるのがデメリットやリスク。

ネット上にはさまざまな情報が溢れていますが、その中には誤解や、条件次第で変わるものも少なくありません。

ここでは、よくいわれる懸念点について、当事者である私たちが「実際のところどうなのか」を、一つずつ正直にお答えします。

よく言われるデメリット エムズとしての答え 概要
夏の冷房には不向き? △(家の性能と工夫で対応可能) 使えます。ただし、冷たい空気はなかなか上昇しないので、冷房の効き始めの遅さなどを補う工夫が必要です。
フィルター掃除が大変? △(頻度は増えるが手間は同じ) 床に設置するしたエアコンの露出しているフィルターを掃除機で吸い取るだけです。壁掛けのようにわざわざフィルターを引っ張りだす作業は必要ありません。
故障・更新費用が高い? ×(シンプルな設備でむしろ安い) ベースは一般的なエアコンのため、特殊な専用設備より修理・交換が圧倒的に安価でスピーディです。
初期費用が高い? 〇(ただしエアコンの総数は減る) 基礎断熱など関連工事費はかかりますが、エアコンの設置台数は減ります。またエアコンの効く範囲が水回りや廊下・玄関まで及びますので、ここをコストとしてどうとらえるか。
リフォームでの導入が難しい? 〇(新築時が基本) 基礎の作りが重要なため、後付けは困難なケースがほとんどです。
床下のカビ・結露が心配? ×(正しい設計・施工で対策可能) 適切な対策をすれば、カビのリスクは極めて低いです。5年後の実態も公開。
シロアリが心配? ×(正しい断熱材・工法で対策可能) 弱点となる外側の断熱材を避け、正しい対策を行えばシロアリのリスクは防げます。
ゴキブリなど虫が心配? ✕(対策可能で、むしろ有利) 基礎断熱(一体打ち工法)はそもそも外気を遮断し隙間がほとんどない状態なので、無視や小動物の侵入リスクは極めて低くなり、清潔な床下環境を保てます。

夏の冷房には不向き? → △(家の性能と工夫で対応可能)

「床下エアコンは夏の冷房には使えない」とよくいわれますが、それは家の性能が低い場合の話です。

エムズアソシエイツのような高気密高断熱住宅であれば、問題なく冷房としても活用できます

ただし、暖かい空気が自然に上昇するのとは逆に、冷たい空気は下に溜まりやすい性質があるため、効き始めるまでに20〜30分ほど時間がかかるという弱点があります。

しかし、これも「24時間つけっぱなしにする」「扇風機やサーキュレーターを併用して空気を循環させる」といった工夫で十分にカバーできます。

ちなみに、我が家では、床下エアコンは冬の間(12月初旬から約3ヶ月間)は24時間つけっぱなしにしています。

また、24時間稼働させても電気料金もそれほど高くなりません。

 

【解説】エアコンの「つけっぱなし」、電気代は大丈夫?

実は、エアコンはスイッチを入れてから設定温度に達するまでがもっとも電力を消費し、一度快適な温度になってしまえば、あとは少ない電力(アイドリング運転)で静かに運転を続けます。
この特性を活かし、こまめにつけ消しを繰り返すよりも、24時間つけっぱなしにしておくほうが、室温の変動によるストレスもなく、夏であれば結果的に電気代もそこまで高くなりません。

冬の暖房は、暖房費があがってしまいますが、それを上回る快適性が得られます。

フィルター掃除が大変? → △(頻度は増えるが手間は同じ)

床付近はホコリが溜まりやすいため、壁の高い位置にあるエアコンよりホコリを吸いやすいのは事実です。

そのため、フィルター掃除の頻度は少し増えるかもしれません。

しかし、掃除の手間自体は壁掛けエアコンと違い、床に設置してありフィルターがそのまま見えるので、、掃除はとても楽になります。

故障・更新費用が高い? → ×(シンプルな設備なのでむしろ安い)

これが、私たちが「シンプルな設備」にこだわる大きな理由です。

床下エアコンは、特殊な専用設備ではありません。その心臓部であるエアコン本体は、ごく一般的な壁掛けエアコンがベースになっています。

そのため、万が一故障しても、基本的な構造は市販のエアコンと変わらないため、修理や交換は安価でスピーディに行えます。

特定のメーカーの専用部品に依存する複雑な全館空調と違い、自由度も高く、将来にわたって安心です。

また、壊れて使わなくなった際、他の設備機器(壁掛けなど)に変える際にも、撤去も非常に簡単にできる仕組みです。

初期費用が高い? → 〇(ただしエアコンの総数は減る)

床下エアコン自体は安いですが、その効果を最大限に引き出すために必須となる「基礎断熱」の工事費が、従来の床断熱工法よりも高くなります

ただし、前述の通り家全体のエアコン設置台数を減らせるため、家全体で見たときのトータルコストと快適指数で考えることが大切です。

リフォームでの導入が難しい? → 〇(新築時が基本)

床下エアコンは、基礎の構造が非常に重要になるため、残念ながら中古やのリフォーム物件では、導入できないケースの方が多いと思ってください。

床断熱の家を基礎断熱に変更するのは、不可能ではありませんが、大規模な工事が必要となり、現実的ではありません。

床下のカビ・結露が心配? → ×(正しい設計・施工で対策できる)

「床下がカビだらけになるのでは?」という不安もよく耳にしますが、これも正しい知識と施工で防げる問題です。

実際に、私たちが建てた築5年のお住まいの床下を点検した際の写真がこちらです。

適切な換気計画と、後述する「一体打ち基礎」のような高い施工技術があれば、床下は常に室内と同じような乾燥した状態に保たれ、カビのリスクは極めて低くなります。

上の写真のお住まいでは、5年間一度も床下を掃除したことはありませんが、ほこりが溜まる等、不潔な環境には全くなっていませんでした。

また、懸念されるダクト内のカビや汚れについても、全く問題ないことが証明できました。

 

余談ですが、この広い床下空間は、スケートボードを使えば点検も楽々です。

シロアリが心配? → ×(正しい断熱材・工法で対策できる)

「基礎断熱はシロアリに弱い」というのも、よくある誤解です。

正しくは、「シロアリが蟻道をつくりやすい断熱材を外側に施工することや、隙間のできやすい施工方法(一般的なべた基礎)に問題がある」のです。

私たちエムズアソシエイツでは、

  • シロアリが侵入できない「一体打ち基礎」
  • 基礎の室内側に断熱をすることで、シロアリの侵入経路をつくらない(外側にパネル系の基礎断熱をすると、白蟻が断熱材の内部を蟻道として侵入し、室内に至ることがあります)
  • 人体に安全で効果が半永久的に持続する「エコボロン(ホウ酸)」による防蟻処理

といった対策を標準で行い、シロアリのリスクを徹底的に排除しています。

ゴキブリなど、虫が心配? → ✕(対策可能で、むしろ有利)

「床下が虫の巣になったら…」と心配される方もいますが、事実はむしろ逆です。

結論からいうと、ゴキブリは出にくいです。

これは、床下エアコンの前提となる「基礎断熱」と「高気密施工」による副次的なメリットといえます。

建物全体の隙間を物理的に徹底してなくすことで、シロアリだけでなく、ゴキブリのような虫が外部から侵入する経路そのものを絶つのです。

床下が外部と通じている従来型の床断熱の家に比べ、そのリスクは何十倍も低いといえます。

もちろん100%ではありません。

排水配管の内部からの侵入や、窓・玄関の開閉時に一緒に入ってきてしまう可能性は残ります。

また、常に清潔で乾燥した床下環境は、湿気を好む虫たちが住み着く場所にはなりません。

念のため、よく開け閉めする窓や玄関扉の近くに市販の駆除剤を置いておけば、さらに安心です。

ちなみに、我が家ではほとんどゴキブリを見ないです。(11年経過しましたが、ゴキブリを見たのは3回程度、ゴキブリホイホイにもゴキブリがいません)

将来後悔しないための設備選びの考え方とは?

快適な空調設備を選ぶうえで、導入時の性能だけでなく、「10年後、20年後のこと」を想定することが後悔しないための鍵です。

ここでは、なぜ私たちが複雑な専用設備ではなく、「シンプルな構造」の設備にこだわるのか、その理由を具体的にお話しします。

私たちが「複雑な専用設備」ではなく「シンプルな設備」を選ぶ理由

私たちの家づくりにおける空調の基本的な考え方は、「過剰で複雑な設備に頼らず、住まい手にとって将来にわたって負担の少ない、シンプルで理にかなった方法で快適性をつくること」です。

なぜなら、故障時の高額な修理費や、専門業者でなければ手が出せないメンテナンスといった、住まい手がコントロールできない「ブラックボックス」を家に持ち込むことは、将来の大きな不安要素になると考えているからです。

私たちエムズアソシエイツが採用する床下エアコンは、一般的な壁掛けエアコンをベースに少しだけ手を加え、床下にダクトを5本ほど設置して空気を送る、という非常にシンプルな構造です。

お客様のご要望に応じて市販の床置き型エアコンや壁掛けエアコンを使うこともありますが、基本的な考え方は同じです。

この「構造のシンプルさ」にこそ、将来にわたってお客様の負担を減らす、明確なメリットがあるのです。

  • 修理・交換・撤去が簡単
    故障してもメンテが容易、費用が安価。交換や、将来不要になった際の撤去も簡単です。
  • シンプルなダクトでメンテナンス・交換・撤去も容易
    床下に設置された数本のダクトは、いつでも床下に潜って状態を確認できます。壁や天井に埋め込まれていないため、清掃や修理はもちろん、将来の交換や撤去も大掛かりな工事なしで簡単に行えます。
  • 将来のアップグレードも安価で柔軟
    技術は日進月歩です。将来、より高性能なエアコンが登場した場合でも、一般的な製品をベースにしているため、最新機種に簡単に交換できます。この「更新の手軽さ」こそ、メーカー専用の複雑なシステムにはない、大きなメリットです。

一方で、天井裏に専用の大型機械を設置し、壁や天井の中に複雑にダクトを張り巡らせるような全館空調は、導入後のリスクを慎重に考える必要があります。

導入コストが高額なだけでなく、故障した際の修理や、10〜15年後の更新には数百万単位の費用がかかる可能性があります。

さらに、壁内に埋め込まれたダクトは、内部の清掃やメンテナンスが極めて困難という大きな課題も抱えています。

だからこそ私たちは、万が一の際に修理・交換・撤去が簡単な、「シンプルな設備」を選ぶべきだと考えているのです。

もちろん、そこにはちゃんとした「快適さ」が確保できる前提です。

【応用編】2階の空調は「個別エアコン」がムダなく快適

「1階が快適なのは分かったけど、2階はどうするの?」という疑問もありますよね。

私たちの答えは、ここでも「シンプルでムダがない」です。

滞在時間の限られる2階の子ども部屋や寝室などの個室まで全館空調化するのは、エネルギー効率の面で非常にもったいないと考えています。

北海道のような極寒の地域では必要でしょうが、岐阜の気候を考えるとそこまで必要はないのではないかと個人的には考えます。

エムズアソシエイツの家は、建物自体の断熱・気密性能が非常に高いため、個室のエアコンはスイッチを入れれば3分もしないうちに快適な温度になります。

そのため、必要な時に必要な部屋だけを個別のエアコンで運転するのが、もっともムダのない方法です。

技術的には、1階の暖気を2階の床下にダクトで送り、その輻射熱で暖める「階間エアコン」という方法もあります。(夏は効率がかなり悪いと考えらます)

しかし、各部屋に「個別エアコン」を設置する方法と比較した場合、コストバランスや効率を考えると、個別エアコンで十分かなと思います。

ただし、リビング自体が2階にあるような特別なプランの場合は、1階と同様の本格的な床下エアコンシステムを2階に構築することも可能です。

床下エアコン成功のカギ!「2つの必須要件」と「エムズ独自の工夫」

床下エアコンの効果を100%引き出すには、どんな家でも良いわけではなく、家の性能に関する絶対的な条件があります。

さらに、私たちエムズアソシエイツでは、性能を最大化するための独自の工夫をしています

必須要件1:大前提となる「本当」の「高気密・高断熱」

床下エアコンの導入効果は、家の断熱・気密性能に大きく左右されます

穴の空いたバケツにいくらお湯を注いでも温まらないのと同じで、家の隙間から熱が逃げてしまっては、いくら床下から暖めても快適な室温にはなりません。

冬の室内で高気密高断熱が不足した住宅のイラスト。外から冷気が侵入し、暖房効率が低下している様子。エアコンの暖房が直接当たっても体が寒いままの人のシルエットと、隙間風による熱損失を示す矢印。

私たちは国が定める省エネ基準をはるかに上回る性能を標準仕様としています。

お引き渡しした実際の物件の直近150棟平均実績値でも、UA値(家の熱の逃げやすさを示す数値)は0.339、実測C値(家の隙間の量を示す数値)は0.323と、岐阜の基準値をはるかに超える「北海道レベル」の性能を維持しています。

この「魔法瓶」のような高性能な器があって初めて、床下エアコンはその真価を発揮するのです。

高気密高断熱住宅の断熱効果を魔法瓶になぞらえた比較イラスト。真空層で熱を逃さない魔法瓶と同様に、断熱材と気密構造で外気を遮断し、暖房の暖かさを室内全体に保つ様子。暖房効率が高く、冬でも快適に過ごせる家の概念図。

必須要件2:「基礎断熱」で床下を室内に

エムズの基礎断熱

床下エアコンは、床下の空間を室内の一部として暖めることで家全体を快適にするシステムです。

そのため、床下を屋外とみなす従来の「床断熱」工法では、原理的に導入することができません。

床下空間を室内と同じ環境にする「基礎断熱」が、絶対の条件となります。

エムズ独自の工夫:一体打ち基礎と地中梁で性能を最大化

さらに私たちは、一般的な基礎断熱から一歩進んだ、独自の工夫を取り入れています。

  • 一体打ち基礎
    基礎の底盤と立ち上がり部分のコンクリートを一度に打ち込むことで、継ぎ目をなくします。これにより、一般的な基礎にある「打ち継ぎ目」からのシロアリや湿気の侵入リスクを物理的に遮断し、気密性・水密性・強度を格段に高めます。
  • 地中梁工法
    本来の地中梁広報の目的は、より強靭な基礎をつくり耐震性を高めることにあります。
    副次的な効果として、基礎内部の立ち上がり部分を極力減らすことが可能で、床下空間の空気の流れをスムーズにします。これにより、床下エアコンの暖かい空気が家の隅々までよどみなく行き渡り、性能を最大限に引き出すことができます。

こうした見えない部分へのこだわりこそが、本当の快適性と安心を支えています。

【実体験】床下エアコンを10年近く使ってわかった、ホコリ・費用・手入れの真実

設備は、導入時よりむしろ、使い始めてからが本番です。

ここでは、わたし自身の自宅での10年近くの運用で実際に起こったこと、かかった費用など、メンテナンスのリアルを包み隠さずお話しします。

よく聞かれる「床下のホコリ問題」、10年近く使った後のリアルを公開

多くの方が心配される「床下はホコリやゴミだらけになるのでは?」という疑問。

この質問は本当によく聞かれますね。

結論からお伝えすると、全く問題ありません。

言葉で説明するより、実際に10年近く経過した我が家の床下の様子を見ていただくのが一番早いでしょう。

想像を超えるきれいさにびっくりしました。

10年近く経過した我が家の床下の様子を見たが、床下エアコンのダクト内も驚くほどキレイ

ついでにダクトの内部も覗いてみましたが、こちらも驚くほどキレイでした。

なぜこれほど汚れないのかというと、理由はシンプルです。エアコン本体のフィルターが空気中のホコリをしっかりと捕集してくれるため、常にキレイな空気がダクトを通って床下に送られているからです。

「10年間くらいはほったらかしでも何ら問題がなさそう」というのが、当事者としての正直な結論です。

6年目に起きた「暖房が効かない!」トラブルと正直な費用

もちろん、良いことばかりではありません。

我が家では、6年目の冬に「暖房がぜんぜん効かない!」というトラブルが発生しました。

原因は、フィルター掃除を怠ってしまったことによる「室内機内部ファンの汚れ」でした。

床付近に設置する宿命として、壁掛けエアコンよりもホコリを吸いやすいのは事実。

その結果、分解洗浄が必要となり、費用は5〜6万円かかりました。

フィルター掃除、これはこまめに行ってくださいね。

【お客様の声】5年目の故障と、それでも「やっぱり床下エアコンはいい」

実は、私たちのOB様の中にも、住み始めて5年が過ぎた頃に床下エアコンが故障した方がいらっしゃいます。

原因は室内機のガス漏れで、防ぐことができない製品自体の初期不良のようなものだったそうです。

やはり、万が一の際にも原因の切り分けがしやすく、対応がシンプルである点も、このシステムの大きなメリットですね。

その大変な2週間があったからこそ、床下エアコンのありがたみを改めて実感されたようです。

これこれ!と思う暖かさ! タイル床が冷たくない!! トイレも寒くない! やっぱり床下エアコンはいい。
(お客様のブログより引用)

【本質】お金をかけるべきは、高価な設備ではなく「家そのものの性能」

ここまで床下エアコンの具体的な話をしてきましたが、結局のところ、高価な「設備」よりも、家の「性能」にお金をかけるべきだということです。

もっともお金をかけるべきは「設備より断熱」

もし、空調設備に200万円、300万円といった大きな予算をかけるのであれば、その一部、例えば100万円を家の断熱・気密性能の向上に使う方が、はるかに高い効果と満足度を得られるんじゃないかなと思います。

なぜなら、設備はいつか必ず壊れる消耗品ですが、家の躯体性能は一生ものだからです。

家の性能はそこそこで、とにかく高価な最新設備にお金をかけてしまったら…。

真冬にその設備が壊れてしまった時のことを考えると、ちょっと怖いですよね。

だからこそ、まずは家の性能をしっかり高めて、その上で、シンプルで安心できる設備を選ぶ。

その方が、長い目で見てずっといい選択だと思います。

「高性能な家」がもたらす究極のメリット

家の「箱」としての性能、つまり断熱・気密性能が高ければ、暮らしは劇的に変わります。

  • 少ないエネルギーで快適に
    高性能な家は、魔法瓶のように熱を逃しません。そのため、オイルヒーターのような簡易な暖房でも、家全体が十分に暖まります。
  • 万が一のリスクヘッジ
    万が一、メインの暖房が故障して使えなくなっても、家の性能が熱を保ってくれます。例えば、外の気温が5℃まで冷え込んでも、室内は18℃~20℃程度を維持できます。暖房が全くない状態でも、凍えるような寒さにはなりません。
  • パッシブ設計の活用
    さらに、南向きの窓から太陽の熱を効率よく取り入れる「パッシブ設計」を組み合わせれば、冬の晴れた日には無暖房で室内を22℃~24℃に保つことさえできます。

最終的に、快適で健康的な暮らしのためには、流行りのハイテク設備に頼るのではなく、まず家自体の性能を最大限に高めること。

それが、一番「正しい選び方」です。

まとめ:床下エアコンの性能は「家の性能」と「施工会社」で決まる

今回は、床下エアコンの真実と、後悔しないための選び方について、私たちの経験と知識のすべてをお話ししてきました。

床下エアコンの本当の価値は、単なる設備の良し悪しではなく、その性能を最大限に引き出すための「家づくりそのものへの考え方」にあります。

ネット上の情報だけでは見えにくいですが、どんなに良い設備も、それを活かす器と技術がなければ意味がありません。

この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 床下エアコンは市販品を利用したシンプルな仕組みで、家全体をムラなく暖める。
  • デメリットの多くは、家の性能と正しい施工で対策できる。
  • 成功の鍵は「本物の高気密・高断熱」と「基礎断熱」が絶対条件。
  • 複雑な専用設備より、将来のメンテナンスが楽なシンプルな設備を選ぶ。
  • もっともお金をかけるべきは、設備より「家の性能そのもの」。
 

私たちエムズアソシエイツは、ただ家を建てるだけの会社ではありません。

岐阜という地域に根ざし、お客様が建てた後もずっと安心して、快適な暮らしを送り続けていただくこと。

それが私たちの本当のゴールです。

だからこそ、私たちは目先の流行りや過剰な設備に頼るのではなく、家の基本性能をとことん高め、床下エアコンのような「シンプルで理にかなった」技術を大切にしています。

もし、私たちの家づくりへの想いに少しでも共感していただけたら、ぜひ一度、あなたの家づくりへの夢や不安をお聞かせください。

モデルハウスでは、ここで紹介した床下エアコンの心地よさも、実際に体感していただけます。

画面越しでは伝わらない「本物の快適さ」を、ぜひ肌で感じてみてください。

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