
プラスチックパネル系断熱材は本当に安心?ポリスチレンフォームのデメリットとリスク解説

投稿日:2025.02.17 最終更新日:2025.03.05

断熱材選びは、家づくりの「快適さ」と「省エネ」を大きく左右する、大切なポイントです。
今回は、この中でも高い断熱効果がある「発泡プラスチックパネル系断熱材」について紹介しようと思います。
- 発泡プラスチックパネル系断熱材ってどんなもの?
- 断熱性能は高いの?
- 本当に良いものなの?メリット・デメリットは?
- 他の断熱材と比べてどうなの?
- 結局、ウチにはどの断熱材が良いの?
高気密高断熱のプロが、発泡プラスチックパネル系断熱材のメリット・デメリットはもちろん、具体的な根拠とともに徹底解説します。
さらに、超高気密高断熱を実現しているエムズアソシエイツが標準採用する高性能グラスウールとの比較も交え、どの断熱材がご家庭にベストなのか考えてみましょう。
- 過去50棟平均実績値 UA値=0.335 実測C値=0.245
- 過去150棟平均実績値 UA値=0.339 実測C値=0.323
(全て実際の引き渡し物件での統計)
断熱材の種類と比較についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。

断熱材の種類と特徴を比較|住宅のプロが本気で選ぶ断熱材とは?
新築やリフォームを検討する際、断熱材選びは家の快適性や省エネ性能を大きく左右する重要なポイントです。 しかし、断熱材には様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットが謳われ、情報が溢れています。 「断熱材は、結局どれが本当に良いの?」 という疑問はよくいただく質問です。 そこでこの記事で

松原 保嗣
プロフィール:
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。
保有資格:
日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員
目次
発泡プラスチックパネル系断熱材ってどんなもの?
発泡プラスチック系断熱材とは?
発泡プラスチック系断熱材は、プラスチックの中に細かい泡を閉じ込めた板状の断熱材です。プラスチックの硬い板みたいなものです。
「ポリスチレンフォーム」や、身近な言葉だと「発泡スチロール」とも呼ばれていますね。
この断熱材の最大の特徴は、内部に多数の微細な気泡を含んでいること。この無数の小さな泡が、熱を伝わりにくくする秘密です。
ダウンジャケットのように、空気の層をたくさん作ることで、外の寒さや暑さを防いで、室内の温度を快適に保ってくれるんですね。
そのため、薄くても高い断熱性能を発揮でき、住宅の外断熱や内断熱に広く利用されています。
また、硬くて丈夫なので、施工時に型崩れせず、現場でのカットや加工が簡単なのも、よく使われる理由の一つでしょう。
現場では、柱の間にはめ込んだり、外壁の外側に貼ったりして使用します。
プラスチックパネル系はどうやって作られる?
発泡プラスチックパネル系断熱材は、こんな感じで作られます。
- ポリスチレン樹脂に、泡を作るための「発泡剤」を混ぜて、十分に混合します。
- 熱を加えて発泡させ、細かい泡をたくさん作ります。
- 発泡した樹脂を型に流し込んで、連続して、またはビーズ状に固めながら板のような形にします。
工場でしっかり品質管理して作るので、厚さや密度が均一で、安定した性能を発揮します。
さらに、この工程で燃えにくくする「難燃剤」や、湿気を防ぐ「防湿剤」などを加えることで、目的に応じた様々な性能を持たせることもできます。
発泡プラスチックの主な種類と特徴
発泡プラスチックには、様々な種類があります。
大きく分けると、板状の発泡プラスチックパネル系断熱材と、柔らかいクッション材として使われることが多いポリエチレンフォームなどがあります。
私たちになじみのある「発泡スチロール」も発泡プラスチックの一種であり、その中でも、特に「ポリスチレンフォーム」が、施工のしやすさや品質の安定性から、住宅の断熱によく使われています。
ここからは、発泡プラスチックパネル系断熱材に焦点を当て、代表的な種類とその特徴を見ていきましょう。
EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)
「発泡スチロール」としておなじみのものです。ビーズ状の粒を蒸気でブワッと膨らませて作ります。
軽くて加工しやすいのが特徴で、お家の外断熱や内装断熱によく使われています。
XPS(押出法ポリスチレンフォーム)
EPSよりも密度が高くて、ギュッと詰まった感じ。圧迫に強く、水にも強いのが自慢です。
連続して押し出して作るため、均一な品質をキープできます。基礎や床下など、湿気が気になる場所の断熱にピッタリです。
フェノールフォーム
断熱性も耐火性も非常に優れています。
ただ、他の発泡プラスチック系断熱材と比べると、お値段は高めです。
ポリエチレンフォーム
柔らかくて、クッション性(防振性や衝撃吸収性)バツグン。音を吸収する効果もあります。ただし、断熱性や剛性は、ポリスチレンフォームにやや劣ります。
断熱材としてだけでなく、物を包むときのクッション材など、色々な場面で活躍します。
プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材のメリット
発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材の主なメリットは、次の2つです。
- 抜群に高い断熱性能
- 施工しやすく、加工も簡単!
抜群に高い断熱性能
発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材の一番の魅力は、やっぱりその断熱性能の高さ。
中に含まれているたくさんの小さな泡が、熱の伝わりをしっかり抑えるので、他の断熱材と比べても高い断熱効果を発揮してくれます。
例えば同じ厚みのセルロースファイバーに対して、パネル系だと、圧倒的にパネル系の方が断熱性能は高くなります。
フェノールフォームは、さらに熱を通しにくいです。
断熱材 | 熱伝導率 (W/m・K) |
---|---|
フェノールフォーム | 約0.019~0.025 |
発泡ウレタンフォーム | 約0.024~0.028 |
発泡プラスチックパネル系断熱材 (XPS, EPS) |
約0.028~0.034 ※XPSの場合 |
高性能グラスウール | 約0.034~0.038 |
セルロースファイバー | 約0.040 |
ロックウール | 約0.040~0.045 |
袋入りグラスウール | 約0.045~0.050 |
出典:
主な特性 | 硬質ポリウレタンフォーム(ウレタンフォーム工業会)
断熱材の区分と熱伝導率(橿原市公式サイト)
この高い断熱性能のおかげで、薄い断熱材でもしっかり効果を発揮。
壁を厚くしなくても、お部屋を広く使えたり、省エネで光熱費を節約できたりと、嬉しい効果が期待できます。
施工しやすく、加工も簡単!
発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材は、硬い板のような形なので、現場での施工がとっても簡単。
工場でサイズや厚みがきちんと揃えられているので、必要な大きさに合わせて切るのも簡単です。
特別な道具がなくても、カッターナイフなどで加工できるのも嬉しいポイントでしょう。
また、軽量であるため、持ち運びや取り付けも比較的楽で、工事期間の短縮にもつながります。
さらに、隙間なく壁にピッタリと貼り合わせられるので、隙間風を防ぎ、冷暖房の効率アップにも貢献します。
施工性と加工性の高さは、我々工務店の様な施工業者にとって大きなメリットとなっています。
発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材のデメリット
ただ、発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)にもデメリットというものがやはり存在します。
- 費用が高い
- 火災時に燃えやすい 燃えると有毒ガスが発生
- 湿気・水分の通過性の低さ
- 地震時に破損しやすい(柔軟性や追従性がない)
- 環境負荷が高い
- 湿気を通し難い
火災時に燃えやすい
発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材は、多くが石油から作られた燃えやすい材料です。
そのため、万が一火事になったときに燃え広がりやすいという、大きな心配があります。
特に、火がつくと燃え広がるスピードが速く、有毒なガスが出る可能性も。
実際、外断熱に採用された事例では、イギリスのグレンフェルタワー火災のように、火が急速に燃え広がり、有毒ガスが発生したケースが報告されています。
参考:「外壁火災」を引き起こした部材選定(日経 xTECH)
もちろん、燃えにくくする工夫(難燃剤を混ぜるなど)はされていますが、火事のときの安全性については、しっかり検討しておく必要があります。
湿気・水分の通過性の低さ
発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材は、その密閉性の高さから水や水蒸気をほとんど通さない性質を持っています。
これは裏を返せば、湿気も通しにくいということです。
例えば、雨漏りなどで壁の中に水が入ってしまうと、断熱材が湿気を閉じ込めて、なかなか乾かない…。
室内に水のシミが現れにくいため、早期発見が難しく、その結果、気づいたらものすごく木材が腐っていた、構造体が腐ってしまったというようなこともあります。
日本は湿度が高い国なので、湿気対策はとても大切。この点は、断熱材を選ぶ上で、しっかり考えておきたいポイントです。
地震時に破損しやすい
硬い板状の発泡プラスチックパネル系(ポリスチレンフォーム)断熱材は、地震の揺れには、比較的弱いという面があります。
強い揺れによって、断熱材にひび割れが生じたり、断熱材同士の間に隙間ができたりする可能性があるためです。
一度壊れてしまうと、復元性がなく、断熱効果は大きく下がってしまいます。
特に、震度4~5くらいの中規模の地震が起きた場合でも、外側は損傷がないように見えても、実は中の断熱材が変形してしまって、断熱欠損を起こす可能性が高いと思われます。
さらに余震が何回も続けば、柱や構造体がゆれて変形を繰り返すので、断熱材がゆがんで断熱欠損が起きることが想定されます。
この点が住宅全体の断熱性能に影響を与える可能性があるので、自身大国の日本においては、この点が大きなリスクとなります。
費用が高い
発泡プラスチックパネル系断熱材は、他の断熱材と比べると、価格が高めになる傾向があります。特に高性能なフェノールフォームなどは、費用がかさむ場合があります。
断熱材そのものの価格だけでなく、工事費用(火災対策など)も入れると、さらに費用がかさむ場合もあります。断熱材を選ぶときは、性能と費用のバランスを、しっかり考えるようにしましょう。
環境負荷が高い
発泡プラスチックパネル系断熱材は、製造時と廃棄時の両方で、環境に負荷をかける可能性がある点が懸念されます。
製造時には多くのエネルギーを消費し、廃棄時にも適切に処理されないと環境汚染の原因となる可能性があります。
「他の断熱材はどうなの?」という疑問にお応えし、下記の記事で各断熱材のメリット・デメリットについては、詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。

断熱材の種類と特徴を比較|住宅のプロが本気で選ぶ断熱材とは?
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エムズアソシエイツは高性能グラスウール(20k)を推奨
エムズアソシエイツでは、住宅全体の安全性や耐久性、長期的なコストパフォーマンスを総合的に評価し、発泡プラスチックパネル系断熱材よりも高性能グラスウールを推奨しています。
なぜ、発泡プラスチック系断熱材ではなく、高性能グラスウールなのか?
その主な理由は、以下の通りです。
- 不燃性: グラスウールは無機物であるため不燃性に優れ、火災時に燃え広がるリスクが極めて低い点が大きなメリットです。
- 透湿性: グラスウールは湿気を通しやすく、壁内の湿気を排出する効果があります。
これにより、壁内結露をさせない壁の構造を計算して施工すれば、結露やカビの発生リスクを大きく低減できます。
特に、地域によっては夏型の逆転結露対策をする場合には、透湿性能が高いほうがより有利となります。(岐阜は夏型逆転結露のリスクが高いエリアとされています。)
夏の湿度の高い日本においては、断熱材の透湿抵抗値をきちんと把握しながら、断熱材も含めた壁内構造を考えることをおすすめします。 - 耐久性: グラスウールは無機質(ガラス繊維)であるため、経年劣化しにくく、長期間にわたって安定した性能を維持します。古い建物や古い車でも、ガラス部分だけは、変色程度はあるものの、物質の劣化はほとんどありません。
- 費用対効果: グラスウールは、他の断熱材と比較して、費用対効果に優れています。
施工精度によって性能が左右される点には注意が必要。
以下は、発泡プラスチックパネル系断熱材と高性能グラスウールを5段階評価で比較した表です。
項目 | 発泡プラスチックパネル系断熱材 | 高性能グラスウール断熱材 |
---|---|---|
コスパ | ×(高コスト、追加工事が必要) | 〇(適度な価格、施工費用も抑制) |
断熱性能 | ◎(非常に高い熱遮断効果) | 〇(安定した高い性能) |
施工性 | ◎(均一な板状でカットが容易) | △(施工にはノウハウと熟練技術が必要) |
耐久性 | 不明(経年劣化の不透明さ) | ◎(無機繊維で長期間安定) |
透湿性 | ×(ほぼ透過せず内部結露リスク) | ◎(透湿性が高く結露リスク低減) |
雨漏れ発見 | ×(湿気を閉じ込めるため早期発見が困難) | ○(施工次第で検知しやすい) |
燃焼・可燃 | ×(可燃性で火災時リスク大) | ◎(不燃性で安全) |
地震時リスク | ×(硬質ゆえ割れやすい) | ◎(復元力があり隙間が生じにくい) |
環境配慮 | △ (製造・廃棄時のエネルギー消費、CO₂排出大) |
○ (無機繊維でリサイクルが可能、環境負荷低減) |
※評価記号は「◎:非常に優れている」「〇:標準的」「△:改善の余地あり」「×:大幅な課題あり」を示します。
上記の比較表と、高性能グラスウールをおすすめする理由から、特に「燃焼・可燃」「透湿性」「地震時リスク」「耐久性」の点で、高性能グラスウールが優れていることがお分かりいただけるかと思います。
発泡プラスチック系断熱材は、火災や結露、地震の際に懸念が残るのに対し、高性能グラスウールは、これらのリスクを低減できます。
高性能グラスウールを推奨する理由について、他断熱材との比較や、メリット・デメリットなど、ここではお伝えしきれない詳細情報は、以下の記事で徹底解説しています。

デメリット以上のメリット!高性能グラスウール断熱材をプロが推奨するワケ
今回は、これまで解説してきた数ある断熱材の中でも、超高気密高断熱を実現しているエムズアソシエイツが自信を持って推奨する「高性能グラスウール」について紹介します。 グラスウールの性能ってどうなの? グラスウールは気密性が高くないって本当? グラスウールはあまり使わない方がいい断熱材
まとめ:発泡プラスチックパネル系で不安や疑問があれば、ご相談を!
ここまで、発泡プラスチックパネル系断熱材について、特徴や種類、メリット・デメリット、そして選び方のポイントまで、詳しく見てきました。
断熱性能の高さは魅力的ですが、火災や湿気、地震のリスク、そして環境への影響も考慮する必要があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
エムズアソシエイツでは、お客様の安心・安全な暮らしを第一に考え、高性能グラスウールを推奨しています。
高い断熱性能はもちろん、不燃性、透湿性、耐久性、そして費用対効果にも優れている点が、その理由です。
長年の経験と実績に基づく確かな技術で、高性能グラスウールのメリットを最大限に引き出し、お客様の理想の住まいづくりをお手伝いします。
「本当に自分に合った断熱材を選べているか不安…」「もっと詳しく話を聞いてみたい!」そう思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
下記の記事でも解説しているので、あわせてご覧くださいね。

断熱材の種類と特徴を比較|住宅のプロが本気で選ぶ断熱材とは?
新築やリフォームを検討する際、断熱材選びは家の快適性や省エネ性能を大きく左右する重要なポイントです。 しかし、断熱材には様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットが謳われ、情報が溢れています。 「断熱材は、結局どれが本当に良いの?」 という疑問はよくいただく質問です。 そこでこの記事で
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