住宅のライフサイクルコストとは?試算でわかった安い家のほうが高くなる理由
投稿日:2026.03.25 最終更新日:2026.03.25
住宅の費用を比較するとき、多くの方は建設費(初期費用)を中心に見ます。
しかし実は、建設費が生涯費用全体に占める割合は約32%。
残りの約68%は光熱費・修繕費・メンテナンス費として、建てた後から30年・50年かけて積み上がります。
「安い家を選んだのに、住んでからの費用が想定以上だった」というのは、この見落としが主な原因です。
実際に、わたしたちエムズアソシエイツの試算では、初期費用が高い仕様の方が35年後のトータルで安くなる結果が出ています。
この記事では、住まいの生涯コストを表す「ライフサイクルコスト(LCC)」の考え方と、エムズが標準採用するコスト削減の5仕様を、自社試算データをもとに解説します。
- ライフサイクルコスト(LCC)の意味と住宅費用の3分類
- 初期費用が安い家が長期的に割高になるしくみ
- 35年スパンのトータルコスト比較(エムズ試算)
- LCCを下げる5仕様の概要と仕組み

松原 保嗣
【プロフィール】
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。
20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。
自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。
【保有資格】
日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員
目次
住宅のライフサイクルコスト(LCC)とは何か?

「家を建てる」と聞くと、多くの人は建設費や土地代を思い浮かべます。
しかし、こうした初期費用は生涯費用全体のごく一部にすぎません。
費用には3つの種類があります。その内訳を確認しておきましょう。
LCCは生涯のトータルコスト、建設費はその約3割にすぎない

ライフサイクルコスト(LCC)の定義は、「建設(取得)から解体・廃棄までにかかる費用の総計」です。
つまり、家を建てるときだけでなく、住んでいる間ずっとかかる費用も含めた「一生分のトータルコスト」のことです。
早稲田大学・小松幸夫教授の試算モデルによると、60年間の木造住宅のLCCは約5,400万円。
そのうち建設関連費(企画設計費+新築工事費)は約1,720万円で、全体の約32%を占めます。
残りの約68%は「補修費」「水光熱費」「取り壊し費」など、建てた後に発生する費用です。
建設費だけを見ていると、生涯費用の約7割が見えないまま、家を建てることになるのです。
まさに、ここが住宅費用を見誤る主な原因になります。
住宅費用はイニシャル・ランニング・メンテナンスの3つに分かれる

住宅のLCCを整理するとき、費用を大きく3種類に分けて考えます。
1. イニシャルコスト(建てるときに発生する費用)
企画・設計費、建設工事費、申請費、登記費用など。
「建てた瞬間に目に見えるお金」です。
初期費用の費目一覧と目安については、こちらの記事を参考にしてください。
注文住宅の初期費用、何にいくらかかる?削れる費用と削ってはいけない費用が分かる
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2. ランニングコスト(住んでいる間ずっと発生する費用)
光熱費(電気・ガス・灯油)、上下水道費など。
総務省の家計調査(2024年平均)によると、二人以上世帯の光熱・水道費は月平均約2万3,000円、年間では約27万7,000円になります。
仮に年間の光熱費が25万円だとすると、35年で約1,250万円、50年では2,000万円を超えます。
住宅の性能によって大きく変わるので、長期では無視できない数字です。
3. メンテナンスコスト(劣化・更新で定期的にかかる費用)
外壁・屋根の補修、設備の交換、リフォームなど。
国土交通省の資料によると、外壁材・屋根材の期待耐用年数は30年、給湯設備や水回りは約20年が目安です。
この3つを合計したものがLCCです。
坪単価や建設費の比較だけでは、ランニングコストとメンテナンスコストの差がまるごと抜け落ちます。
「安い家と高い家のどちらが本当に得か」は、3つを合算してはじめて分かることです。
坪単価による比較がなぜ危ういのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
注文住宅は坪単価で比較すると失敗する|500万変わった実例と3つの理由
注文住宅を検討する際、各社から「坪単価○○万円です」と説明を受けたことはありませんか? 結論からいえば、坪単価はあくまで目安であり、絶対にそれだけで比較すべきでありません。 なぜなら、坪単価は「何を含めて計算するか」が会社によってまったく違い、単純比較できないからです。 実際、私たちエムズアソ
初期費用が安い家が、35年後に高くつくのはなぜ?

「そうはいっても、初期費用が安い方が、やっぱり安いんじゃない?」
そう思いますよね。
ところが、35年後の数字を見ると、話は変わります。
建設費の差が、30〜35年後に逆転するのはなぜか。
エムズアソシエイツの試算データをもとに、そのしくみを見ていきましょう。
初期費用は230万円高いが、35年後にはトータルで95万円お得になる
エムズアソシエイツでは、「エムズレベルの高性能仕様」と「長期優良住宅レベルの一般的仕様」を35年スパンで比較した試算表を作成しています。
新築時にかかる差額の内訳
一般的仕様の前提:外壁サイディング・内装クロス・床合板系(長期優良住宅レベル)
エムズの仕様は新築時に230万円高くなります。
ただ、35年後の費用を見ると、話は変わります。
35年後に生じる費用差額の内訳 2026年現在
※エムズアソシエイツ自社作成「トータルコスト比較表」
35年間の累計差額は527.5万円。
電気代は年2%の上昇率が続いていますので、電気代は今後さらに差が開く可能性もあります。
初期費用の差(230万円)を差し引くと、35年トータルでエムズの高性能仕様が約297.5万円 約300万もお得という結果です。
高性能住宅・ライフサイクルコストを考えた設計ができれば、初期費用は高くとも、長期的には必ず安くつきます。
これが費用が逆転するしくみです。
光熱費とメンテナンス費の差が、35年かけて逆転を生む
費用の逆転を生む主な要因は、光熱費とメンテナンス費の2つです。
光熱費の差:年3.5万円が35年で122.5万円に積み上がる
断熱性能が高い家は外気温の影響を受けにくく、冷暖房にかかるエネルギーを大幅に抑えられます。
エムズの試算では、エムズレベルと一般レベルの光熱費の差は年間約3.5万円。
たしかに小さく見えます。
ただ、35年で積み上がると122.5万円になります。
光熱費差額の累計推移(年3万円差の場合で試算)
| 経過年数 | 累計光熱費差額 |
|---|---|
| 5年 | 約15万円 |
| 10年 | 約30万円 |
| 15年 | 約45万円 |
| 20年 | 約60万円 |
| 25年 | 約75万円 |
| 30年 | 約90万円 |
| 35年 | 約105万円 |
| 40年 | 約120万円 |
| 45年 | 約135万円 |
| 50年 | 約150万円 |
差額3万円/年の固定値で計算。
さらに、光熱費は毎年上昇傾向が続いています。
過去の電気代上昇率(2%/年)を前提としたエムズの試算では、年間25万円の光熱費が35年後には累計約1,250万円、50年では2,000万円を超えます。
| 経済産業省 資料 電気料金の変化 |
光熱費総額の累計推移(年2%上昇で試算)
| 経過年数 | 累計光熱費 |
|---|---|
| 5年 | 約130万円 |
| 10年 | 約274万円 |
| 15年 | 約432万円 |
| 20年 | 約607万円 |
| 25年 | 約801万円 |
| 30年 | 約1,014万円 |
| 35年 | 約1,250万円 |
| 40年 | 約1,510万円 |
| 45年 | 約1,797万円 |
| 50年 | 約2,115万円 |
年間25万円の光熱費が2%/年で上昇した場合の試算(エムズ作成)。
仮に光熱費を半分(年間12万5,000円)に抑えられれば、35年間でなんと約600万円の削減になります。
国土交通省のデータでも、同様の傾向が確認できます。
ZEH水準(省エネ性能の水準)と省エネ基準の住宅を比べると、東京相当の地域で年間46,000〜53,000円の光熱費差があります。
岐阜市は東京より寒冷なため、差はさらに大きくなる可能性があります。
メンテナンス費の差:一般仕様は35年で150万円多くかかる
一般的なサイディングは10〜15年ごとに外壁塗り替えとシーリングの打ち替えが必要で、足場も必要となり1回あたり約100~150万円かかります。
30年後には3回分なので、約300~450万円の出費になります。
室内のビニールクロスも定期的な張り替えが発生し、床材の張替えも考えると、35年間の累計メンテナンス費は、エムズの試算では約100万円多くなります(前掲の35年トータルコスト比較表「メンテナンス費(外壁・設備・内装)+300万円」参照)。
この光熱費とメンテナンス費の差が積み重なることで、先ほどの「費用の逆転」が起きるというわけですね。
エムズが標準採用する、光熱費とメンテ費を下げる5つの仕様とは?

LCCを下げるためにもっとも効果が大きいのは、住宅の設計・仕様そのものです。
エムズアソシエイツでは、長期的なコスト削減を見据えた5つの仕様を標準で採用しています。
- 高気密高断熱+パッシブ設計(ランニングコストを抑える)
- 軒のある設計(外壁・屋根のメンテナンスコストを抑える)
- エコボロン防蟻処理(防蟻コストを安定させる)
- 地中梁工法(基礎・躯体のメンテナンスコストを抑える)
- メンテナンス性の高い屋根・外壁材(塗り替えや張替えコストを抑える)
それぞれがどのコストを、どんな仕組みで下げるのか、順に見ていきます。
高気密高断熱+換気+パッシブ設計の組み合わせで冷暖房費を下げる

エムズアソシエイツの断熱性能は、UA値0.35〜0.45、C値0.3〜0.6(全棟気密測定を実施)。
付加断熱仕様「ナチュレ・ECO ZERO」ではUA値0.26〜0.46を実現しており、HEAT20 G2相当(断熱性能の目安)です。
この性能を、換気でさらに生かします。
採用しているダクトレス第一種換気システムは最大温度交換率91%以上(排気の熱をどれだけ回収できるかの目安)で、冷暖房費を27%抑えられます。

さらにパッシブ設計(日射取得・日射遮蔽・採光の最適化)と組み合わせることで、太陽の熱や光を最大限に生かし、冷暖房に頼る場面をさらに減らせます。
試算に出てきた35年間の光熱費差122.5万円。
この数字の根拠が、断熱・気密性能にあります。
パッシブデザインとは?エアコンに頼らない家は、設計の力で実現できる
家づくりで「高気密高断熱」が大切だということは、もはや常識になりつつあります。 「夏は涼しくて、冬は暖かい。しかも、光熱費はできるだけ抑えたい…」 そう考えて情報を集めていると、必ずと言っていいほど「高気密高断熱」というキーワードに行き当たりますよね。 快適な室温を保ち、光熱費を抑えるために、
【9割が知らない】高気密高断熱のデメリットは設計・施工力で決まる!
高気密高断熱住宅について情報を集めていると、たくさんのメリットが紹介されている一方で、 「ハウスダストは大丈夫?」 「実は結露しやすいって本当?」 「初期費用が高くつくのでは?」 といった、デメリットに関する様々な声も耳にします。 しかし、実はこれらのデメリットは、「本物の高気密高断熱住宅
軒のある設計で外壁の塗り替えサイクルを延ばす

最近は外観をすっきり見せるため「軒ゼロ」の設計が増えています。
正直、見た目は洗練されているのですが、数年後の外壁の状態を見ると後悔した、という声をよく聞きます。
軒がない家では、横殴りの雨や強い紫外線が外壁に直接当たりつづけます。
結果として塗装の劣化が早まり、カビやコケが発生しやすくなるのです。

住宅保証支援機構の資料でも、軒の出が100mm未満の場合は外壁開口部にトラブルが生じやすいと示されています。
軒を設けることで外壁の劣化速度を抑え、塗り替えサイクルを延ばす。
エムズアソシエイツが軒のある設計を標準とする理由は、デザインの好みではなく、長期コストへの考え方からです。
半永久的なシロアリ対策で、5年ごとの再施工費用をカット

一般的なシロアリ対策では、5年ごとに薬剤を塗り直す必要があります。
農薬系の処理剤(ピレスロイド系)は蒸発すると効果が薄れるからです。
その費用は1回あたり約20万円。
5年ごとに繰り返せば、30年間で相当な出費ですよね。
エムズアソシエイツが採用するエコボロン(ホウ酸塩)は、木部に染み込ませることでシロアリが木を食べられない状態にします。
揮発しないため効果が半永久的に続き、再施工コストが不要になるのです。
シロアリなどの虫類には毒性がある一方、哺乳動物への急毒性は食塩と同程度と言われており、小さなお子さんがいる家庭でも安心して使えます。
基礎断熱工法がシロアリに弱いは嘘?床断熱との違いと基礎断熱が断然有利なワケ
「冬、暖房をつけているのに、なぜか足元だけスースー寒い…」 「朝、床が冷たくて布団から出るのが億劫…」 そんな経験はありませんか? 一年中、家のどこにいても心地よい温度で快適に過ごしたいというのは、多くの人の願いですよね。 そのカギを握るのは、実は「床下の断熱方法」かもしれません。 床下の
地中梁工法で将来の水回りリフォームコストを格段に下げる
一般的なベタ基礎は立ち上がり(基礎の壁)が多く、配管がその間に混み合います。
将来、水回りをリフォームしようとすると床を壊して配管を通し直す必要があり、費用が大きく膨らみやすいのです。
エムズアソシエイツが採用する地中梁工法は、基礎の壁(立ち上がり)を減らす代わりに、地面の中に梁を通して強度を確保する工法です。
一般的には重量鉄骨などの大型建物で使われますが、エムズはこれを木造住宅に応用しています。
立ち上がりが少ない分、床下の配管を通すスペースが広がり、将来のリフォームが格段にやりやすくなるのです。

写真:エムズの地中梁工法により基礎立ち上がりが少なくなり、配管の取り回しがしやすくなる
一体打ち基礎で継ぎ目をなくし、湿気や白蟻、水の侵入を防ぐ
ベース(基礎底盤)と立ち上がり部分を一度に打つ「一体打ち工法」で継ぎ目をなくし、湿気・シロアリ・水の侵入を防ぎます。
一般的なべた基礎 打ち継ぎあり(隙間ができます)

エムズの標準仕様の一体打ち基礎 打ち継ぎの継ぎ目がありません

基礎の不具合は、いったん起きると修繕費が膨大になるため、そのリスクを事前に断つのです。
地中梁とベタ基礎は何が違う?木造住宅こそ「地中梁工法」が最強な5つの理由
家づくりを考えるとき、多くの方は間取りやデザイン、設備のことを中心に検討します。 一方で、家を支えている「基礎」まで意識して見ている方は、それほど多くないかもしれません。 ただ、この見えない基礎の中にも、最低限知っておくと安心なポイントがあります。 そのひとつが、「地中梁」と「ベタ基礎」という
メンテナンス性の高い外壁材で塗り替えサイクルを延ばす
先の試算でも触れたように、サイディングのメンテナンスコストは30年で約300万円~になります。
エムズアソシエイツは、高耐候性の外壁材(劣化しにくい外壁材)を標準採用しおり、35年間のメンテナンスは1度するかしないか。
塗り壁材は耐久性が高く、10〜20年後のメンテナンスコストが不要です。
次世代ガルバリウム鋼板(SGL)は従来品と比べて3倍の防錆耐久性があり、塗り替えサイクルが大幅に延びます。
初期費用はやや高くなりますが、35年・50年のトータルで見れば、耐久性の高い外壁材の方が結果的に安くつきます。
これが私たちの考えです。
まとめ:ライフサイクルコストで見ると、高性能住宅の方が安くなる!
住宅の費用を建設費だけで比べると、生涯費用の約7割が見えないまま判断することになります。
35年・50年という長いスパンで見れば、初期費用が高い家の方がトータルで安くつくことはよくあります。
- 建設費は生涯費用の約32%にすぎない
- 35年後、安い仕様の方がトータルで高くつく(エムズ試算)
- 光熱費・メンテナンス費の累積差が「費用の逆転」を生む
- エムズの5仕様はそのコストを削る設計になっている
建てた後の費用まで含めて計算すると、費用の見え方はまるで変わります。
それが、家づくりで判断すべき本当の軸だと思っています。
エムズの家づくりは、最初からその35年後・50年後を見据えた仕様になっています。
最長60年の長期保証も、これらの仕様への自信があってこそです。
岐阜でライフサイクルコストを意識した家づくりをお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
建てる前の段階から、長期コストの考え方も含めて一緒に整理します。
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