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耐震等級3相当の裏側。「相当」の本当の見極め方を自社で構造計算する工務店が解説

家づくりを進める中で、工務店から「うちは耐震等級3相当です」という説明を受けたとき、「”相当”って何だろう?正式な等級3と何が違うんだろう」と思ったこと、ありませんか?

この「相当」という言葉、実は工務店によって使う理由がさまざまです。

本当に施主様のために使っている場合もあれば、注意すべき【ウラ】の理由で使っていることもあります。

ただ、外から見ているだけでは、どちらのタイプなのか分かりにくいですよね。

さらに知っておいてほしいのは、耐震等級だけでは表せない地震対策もあるということ。

この記事では、「耐震等級3」と「耐震等級3相当」の違いと、工務店が「相当」を使うさまざまな理由を、岐阜で20年以上、高性能な家づくりにこだわってきた工務店だからこそわかる「ウラ事情」も交えながら、解説します。

この記事を読めば、こんな疑問がスッキリ解決します!
  • 「耐震等級3」と「相当」の決定的な違い
  • 「耐震等級3相当」のメリットとデメリット
  • 工務店が「相当」を使う本当の理由
  • 耐震等級だけではない地震対策とは?
  • 工務店を見極めるための4つの質問リスト
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この記事を書いた人
亀山 学

【プロフィール】
岐阜県本巣市出身。株式会社エムズアソシエイツ 設計部所属。今までに500棟以上の住宅設計に従事。
お客様の理想を丁寧にくみ取り、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた住まいを提案。
構造計算を自ら行う設計者として、デザインと性能の両立にこだわり、安心して長く暮らせる家づくりを追求している。
土地探しから設計・施工まで一貫して関わり、岐阜エリアで多くの施主の家づくりを支援。理論と感性の両面から“心地よい暮らし”を形にしている。
【保有資格】
二級建築士・気密測定技能者・BIS資格
【保有スキル】
構造計算(木造住宅構造設計)/高気密・高断熱設計/パッシブデザイン設計

耐震等級とは?1・2・3の性能の違いを分かりやすく解説

耐震等級は、建物が地震に対してどの程度の強度を持つかを示す指標です。

1から3までの等級があり、数字が大きいほど耐震性能が高くなります。

住宅性能表示制度に基づく指標で、設計時の構造計算により判定されます。

耐震等級1:建築基準法で定められた最低限の基準

耐震等級1は、建築基準法で定められた、新築住宅に必須の耐震性能です。

具体的には、「数百年に一度」発生する大地震(震度6強〜7)で倒壊・崩壊しないレベル、そして「数十年に一度」発生する地震(震度5強)で損傷しないレベルを指します。

とはいえ、あくまで「最低限」の基準です。

倒壊はしなくても、大規模な修繕が必要になる可能性は残ります。

なお、現在、新築住宅で耐震等級1の基準以下を建てることは建築基準法で禁止されています。

耐震等級2:学校や病院と同レベルの強度

耐震等級2は、等級1の1.25倍の強度を持ちます。

学校や病院など公共建築物に求められるレベルで、長期優良住宅の認定基準の一つでもあります。

耐震等級3:消防署や警察署など防災拠点と同じ最高等級

耐震等級3は、等級1の1.5倍の強度を持つ最高等級です。

消防署や警察署など、災害時の防災拠点となる建物に求められるレベルと同等の性能を持ちます。

2016年の熊本地震では、旧耐震基準(1981年以前)の建物の被害率が高く、2000年以降の現行基準(等級1相当)の建物でも一部倒壊・大破の被害が見られました。

しかし、等級3の家は無被害または軽微な被害であったことが報告されています。

耐震等級 強度 主な用途 地震保険割引率
等級1 基準の1.0倍 一般住宅(最低限) 10%
等級2 基準の1.25倍 学校・病院など 30%
等級3 基準の1.5倍 消防署・警察署など 50%

「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は何が違う?

耐震等級の基本を理解したところで、いよいよ本題です。

「耐震等級3」と「耐震等級3相当」の決定的な違いは何か、そしてその違いによって、どのようなメリット・デメリットが生まれるのかを、ここで一気に解説します。

違いは「第三者機関による証明書」があるかどうか

「耐震等級3」と「耐震等級3相当」の決定的な違いは、「第三者機関による証明」があるかどうかです。

「耐震等級3」は、住宅性能評価機関など第三者機関が審査し、認定したものです。

「お墨付き」がある状態といえます。

第三者機関とは、登録住宅性能評価機関のことで、国土交通大臣の登録を受けた機関です。

住宅性能表示制度に基づき、設計図書を審査し、建設工事・完成時の検査を行います。

認定を受けると、「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」が交付されます。
(ちなみに長期優良住宅認定では「設計住宅性能評価書」が必要です)

 

一方、「耐震等級3相当」は、第三者機関の認定を受けていません

建築会社が自社の基準や計算に基づいて「等級3と同程度の性能がある」と判断したものです。

建築会社が独自に構造計算を行い、その結果に基づいて「相当」と表現しています。

つまり、性能そのものではなく、「客観的な証明があるかどうか」が唯一の違いです。

メリットは認定費用20〜30万円が不要になること

「耐震等級3相当」を選ぶメリットとして、まずコスト面が挙げられます。

第三者機関の認定費用は20〜30万円程度かかります。

また、申請の手間や時間(2〜3ヶ月)も不要です。

さらに、構造計算の制約を受けにくいため、設計の自由度が高くなります。

大きな窓や吹き抜けなど、デザイン面での選択肢が広がります。

デメリットは地震保険の割引がなく資産価値への影響も

とはいえ、「耐震等級3相当」にはデメリットもあります。

もっとも大きいのは、第三者機関の証明がないため、性能を客観的に示せない点です。

 

また、地震保険の50%割引が受けられません

耐震等級3(正式認定)の場合、地震保険料は50%割引になります。

等級2は30%割引、等級1は10%割引です。

 

岐阜県で地震保険2,500万円をかけた場合、耐震等級3と等級1の差額は1年で12,300円、30年だと369,000円もなります。

愛知県では1年で21,200円、30年だと636,000円の差になります。

つまり、「相当」の場合、この割引が適用されないため、長期的に見ると、30年で37〜64万円の差と、大きな差が生まれるのです。

 

さらに、長期優良住宅の認定を受けにくく、将来の売却時に資産価値が下がる可能性もあります。

万が一の地震で倒壊した場合、性能を証明できないというリスクも残ります。

  耐震等級3 耐震等級3相当
第三者機関の認定 あり なし
地震保険割引 50% なし
費用 認定費用20〜30万円程度 不要
申請期間 2〜3ヶ月 不要
設計自由度 制約あり 高い
長期優良住宅認定 取得しやすい 取得しにくい
資産価値 維持しやすい 下がる可能性

なぜ工務店は「耐震等級3相当」と言うの?その理由と本音

では、なぜ工務店は「相当」という言葉を使うのでしょうか?

実はここに、工務店の姿勢が表れます。

一般的な理由はコスト削減と申請の手間省略

工務店が「相当」を使う一般的な理由は、主に以下の3つです。

  1. コストを抑えるため
  2. 審査の手間・時間を省くため
  3. 建築確認に通れば問題ないという考え

まず、コスト削減です。

正式に耐震等級3を取得するには、第三者機関による審査費用(数万円〜十数万円)がかかります。

この費用を抑えることで、お客様の負担を減らすという考え方です。

 

次に、審査の手間・時間を省くためという理由もあります。

設計段階での申請・修正・再審査など、書類対応が多くなります。

小規模な工務店ほど、人的リソース的にきつくなります。

 

また、「建築確認に通れば問題ない」と割り切る考え方もあります。

「建築基準法を満たしてるから十分」という判断です。

等級3は法的に必須ではないため、「相当」で済ませる工務店も多いのが実情です。

注意すべき【ウラ】の理由|性能への不安が隠れていることも

一方で、こうした一般的な理由とは異なる、注意すべき理由で「相当」を使う会社も存在します。

  • 構造的に”本当の等級3″を取れない設計をしている
  • “等級3=強い家”のイメージだけを借りたい
  • 検査を避けたい
  • 営業的な”逃げ”として使いたい

まず、構造的に”本当の等級3″を取れない設計をしているケースです。

耐震等級3は、構造壁や耐力壁の配置バランス、開口部の大きさ、梁・柱の断面など、すべてが厳しく見られます。

デザイン優先(大開口、吹き抜け、スキップフロアなど)だと、等級3を取れないことがあります。

しかし、「相当」と言っておけばデザインも維持できて、営業的にも強いわけです。

 

次に、“等級3=強い家”のイメージだけを借りたいという意図もあります。

性能評価書までは取らないけれど、言葉の印象だけ使う。

「等級3相当です」と言えば、消費者には”等級3みたいな強い家”と伝わります。

実際には中身の根拠があやふやなままです。

 

さらに、検査を避けたいという理由もあります。

正式認定を取ると、第三者の検査で構造の弱点が見つかることがあります。

修正対応や再申請になるとコストも納期も増える。

だったら「相当」で逃げ道を作る、という発想です。

 

そして、営業的な”逃げ“としても機能します。

「等級3」と断言して後で何か問題が起きたら責任を問われる。

しかし「相当」なら”保証はしてない”という免責っぽいクッションになる。

リスク回避の言葉でもあるわけです。

 

つまり、「相当」という言葉は、使う理由によって工務店の姿勢が分かれるといえます。

コストや手間の合理的な判断で使う会社もあれば、構造計算や検査に自信がないために使う会社もある。

本当に構造に強い工務店は、時間とお金をかけてでも「正式等級3」を取る傾向があります。

自社で構造計算をするエムズが耐震等級3「相当」を使う理由

と、ここまで一般的な話をしてきましたが、実は我々エムズアソシエイツも「耐震等級3相当」を使っています。

しかし、エムズではちょっと違った理由で「相当」を使っています

エムズアソシエイツでは、自社で構造計算をやっています

過去に等級3が取れなかったことは一度もありません。

それなのに「相当」を使っている。なぜでしょうか?

 

「相当」という言葉がついている理由は、公的な機関で証明を取る前では、耐震等級3を確定できないからです。

 

「耐震3」と謳って良いのは、公的な機関で証明をとった場合にのみ許される表現です。

ほとんどのお客様が長期優良住宅の認定を受けており、その認定を受けると耐震3の証明ももらえるので、正式な耐震3となっている物件がほとんどです。

つまり、最終的には「等級3」をちゃんと取得しているのですが、建築前の段階では誠実に「相当」と表現している、というわけです。

ちょっと真面目すぎる?

実際に、エムズの設計基準は「耐震等級3」を標準仕様としています。

さらに、制震ダンパーや偏芯率の考慮、地中梁工法、結露対策など、耐震等級の計算には反映されない独自の工夫も行い、設計通りの強度を実現する施工品質にもこだわっています。

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地震対策は耐震等級だけではない!エムズ独自の工夫

エムズアソシエイツは、耐震等級3を標準とした上で、さらに+αの地震対策・安全性を追求しています。

耐震等級の計算には直接反映されない部分も含め、本当に安全な家を実現するための独自工夫を紹介します。

制震ダンパーで揺れを40%軽減

耐震等級3は構造の強度を示すものですが、制震ダンパーは揺れそのものを吸収する装置です。

エムズが採用する制震ダンパー(Jダンパー)は、揺れを約40%軽減します。

繰り返しの余震にも強く、メンテナンスフリーです。

この制震ダンパーを取り付けると、地震保証が無償で20年間付保される(地震で全壊した場合には、建物の金額すべてが保証される)というメリットもあります。

また、エムズが採用するダンパーはサイズがコンパクトなため、壁の中に入れる断熱材の量を減らさずに済み、断熱欠損を最小限に抑えられるのも隠れたメリットです。

なお、制震ダンパー自体は「耐震等級」の計算には直接反映されません。

しかし、実際の揺れから家を守る上で、制震装置の設置をおすすめしています。

建物のねじれを防ぐ「偏芯率0.1以下」の設計バランス

偏芯率とは、建物の重心と剛心(強さの中心)のバランスを示す指標です。

建物には「重さの中心=重心」と「強さ・剛性の中心=剛芯」が存在しますが、この2つが合致することは極めて稀です。

建築基準法では0.3以下とされていますが、エムズは0.1以下を目標にしています。

偏芯率が小さいほど、地震時のねじれが少なく、構造が安定します。

同じ耐震等級3でも、偏芯率によって実際の安全性は変わります。

偏芯率は「耐震等級」の計算に間接的に影響する部分があります。

地震時のねじれに強い「地中梁工法」の基礎

地中梁工法とは、地中部分に鉄筋の梁を入れる工法です。

大型地震の際の地盤の”ねじれ”に強いのが特徴です。

重量鉄筋など大型建築では普及していますが、木造住宅ではまだ少ない工法です。

エムズでは標準採用しています。

この工法により、基礎の強度が増し、立ち上がり部分を減らすことができます。

配管のルートの自由度が高く、メンテナンスや点検、将来的な水周りのリフォームも格段にやりやすくなります。

1階の床下空間が一体となっているため、床下冷暖房装置の空調設備を加えれば、1階の全館空調も可能です。

計算以上に横揺れに強い「内壁胴縁工法」

内壁胴縁工法とは、3cm×4cmの角材を横向きに配列する工法です。

物理的な強度が間違いなく上がり、特に柱の横揺れの軽減に有利です。

残念ながら、構造計算上の数値には反映されませんが、実際の耐震性は間違いなく向上します。

この工法は、気密シートを切り欠かずに、3㎝の隙間にコンセントやスイッチのボックスを取り付けることができるという副次的な効果もあります。

気密性能を向上、持続させる大きな要因にもなっています。

木の腐食を防ぐ「結露対策」で家の寿命を延ばす

地震に強い家を建てても、木が腐ってしまったら意味がありません

エムズでは、見えない結露である、壁内結露を起こさない独自の壁層構造で木材の劣化を防いでいます。

結露対策は断熱・気密性能にも関わるため、エムズの得意分野です。

結露させない家の秘密は、下記の記事でご覧ください。

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設計通りの強度を出す「現場の施工品質」

耐震等級3は設計時に計算で導き出しますが、一番大事なのは現場での施工品質です。

例えば、エムズでは耐力面材の釘のめり込み管理を徹底しています。

9mmの耐力面材に釘が4mmめり込むと耐力が半分になってしまいます。

構造面材のメーカーの施工指針書では、はっきりと「釘のめり込みは1mm以下」と謡っています。

つまり、1mm以上釘をめり込ませてしまうと、本来の耐震強度が取れなくなることを意味します。

そのため、釘打機の圧を弱めで打ち、飛び出た釘を大工が1つずつ金槌で打っています

正直大工さんの立場からは、釘打機の圧を高め、多少めり込んでも一度で済ませたほうが手間も時間もかかりません。

ただ、そうすると、釘が1mm以上めり込んだ際には、品質へのリスクに直結してしまいます。

釘のピッチ(釘を打つ間隔)の確認もチェックリストを使ってしっかり管理しています。

ピッチ(間隔)が1か所でも規定以上になると、耐震強度の品質が担保できなくなる可能性があるからです。

これらは公的な機関の検査はなく、かなり手間がかかる作業ですが、本当の耐震のためには、とても大事です。

依頼して大丈夫?「相当」を使う工務店を見極める4つの質問

ここまで読んで、「”相当”という言葉の裏には、工務店の姿勢が隠れている」ことを理解していただけたと思います。

では、実際に工務店と話す際、どのような質問をすれば、その姿勢を見極められるのでしょうか?

以下の4つの質問を使ってください。

質問1:「”相当”を使う理由は何ですか?」

コスト削減のためなのか、誠実な理由があるのか、ここで工務店の本音が見えてきます。

質問2:「過去に等級3が取れなかった事例はありますか?」

この質問で、工務店の構造計算の実力が分かります。

質問3:「構造計算は自社で行っていますか?それとも外注ですか?」

自社で構造計算を行っている会社は、構造への理解が深く、設計の自由度も高くなります。

ただし、一般的に、ほとんどの会社は外注です。

質問4:「耐震等級以外の地震対策はしていますか?」

基礎の工夫、結露対策、施工品質管理など、耐震等級の計算には反映されない部分にどれだけこだわっているかが分かります。

これらの質問に対する答え方で、工務店の姿勢が分かります。

もし答えに詰まったり、曖昧な回答しかできない場合は、再考の余地があります。

まとめ:「相当」の見極め方を知れば、工務店の本気度が分かる

この記事では、「耐震等級3相当」という言葉の裏にある、工務店ごとの事情と姿勢の違いを解説してきました。

「耐震等級3」と「相当」を分けるのは、第三者機関による証明があるかどうかです。

しかし、工務店が「相当」を使う理由はさまざまで、コスト削減や申請の手間を省くためという会社もあれば、構造的に等級3を取れない設計や、検査を避けたいという理由が隠れていることもあります。

  • 「耐震等級3」と「相当」の違いは第三者機関による証明の有無
  • 証明の有無で地震保険料に30年で37〜64万円の差
  • 「相当」を使う理由で工務店の姿勢が見える
  • 4つの質問で工務店の本気度を確認できる
  • 耐震等級の計算に表れない地震対策もある
 

「相当」という言葉そのものが問題ではありません。

その言葉を使う背景に、どれだけ構造への理解と施工への覚悟があるかが問われています。

エムズアソシエイツは岐阜で20年以上、家族の健康を守る高性能にこだわった家づくりを続けてきました。

もしエムズの家づくりに興味を持っていただけたなら、岐阜市のモデルハウスで実際の構造や施工品質を体感してみてください。

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