Column
耐震改修はリノベーション・リフォームと同時に!がコスパ◎
松原 保嗣
岐阜市拠点の株式会社エムズアソシエイツ代表取締役。20年以上、注文住宅の設計施工に携わり、高気密・高断熱住宅やパッシブデザインを取り入れた設計を通して、圧倒的な快適住空間を提供。自社ブログや年間100回以上のセミナー登壇を通じ、延べ500名以上の施主の家づくりを支援し、施主啓発にも努める。 保有資格: 日本エネルギーパス診断士、省エネ建築診断士、気密測定技能者、地盤インスペクター、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具専門相談員
岐阜県や愛知県でリフォームやリノベーションをご検討の方へ。
今後の予測される地震(南海トラフ地震)に備えて、我が家の耐震基準は大丈夫なのか?ご心配の方も多いと思います。
ここではリノベーション・リフォームと同時に耐震改修をする場合のメリットやデメリット、その他有益な情報を解説していきます。
まずはじめに知っておきたいこととして、耐震基準というものが存在すること。
耐震基準には旧耐震基準(1981年昭和56年以前)と新耐震基準(1981年 昭和56年6月1日以降の建築確認)が存在します。
住宅の耐震性を語る上で、絶対に知っておきたいのが「建築基準法」の大きな改正があった1981年(昭和56年)6月1日という日付です。
この日を境に、耐震基準は大きく2つに分けられます。
■旧耐震基準(1981年5月31日までの建築確認)
震度5程度の地震で家屋が倒壊しないことが基準。
震度6以上の大規模な地震は想定されていません。
■新耐震基準(1981年6月1日以降の建築確認)
震度6強から7程度の大規模な地震でも、家屋が倒壊・崩壊しないことを目指す基準。
まずは、リノベーションやリフォームをする前に、その建物が耐震基準を満たしているのかどうかを判断することから始めましょう。
1 耐震改修とは何か?
-
「耐震改修」とは、既存の住宅に対して、地震に強くするために基礎や柱(筋交い)などの構造部を補強・改修する工事のことです。
下図参照


-
特に、昭和56年(1981年)以前の「旧耐震基準」で建てられた住宅は、現在の基準に比べて地震に弱いケースがあります。
必ず、完了検査が昭和56年以前か以後の確認を怠いようにしてください。
■リフォーム・リノベーションを行うタイミングで、「耐震性の見直し」をセットで検討するのが最近の傾向であり、最もコスパをよくすることにつながります。
改修内容としては、例えば壁の「耐力壁を増やす」
瓦屋根からガルバリウム鋼板の屋根に吹き替えて「屋根を軽くする」
「柱・梁の接合部を金物で強化する」
「基礎を補強する」
などがあります。
2. なぜ今「耐震改修」を考えるべきか?そのメリットとは!?
耐震改修を行うことで得られる主なメリットを整理します。
2‑1 安全性の向上
大きな地震が発生した場合でも、倒壊・大きな損傷を防ぐ可能性を高められます。
実際、住宅所有者のアンケートでは「安全性が増す」と答えた人が約91%に上っています。
参考記事:国土交通省 耐震改修リフォームについて
耐震改修をする上では、建物の耐震性の基準として、上部構造評点という数値が使われますが、
建物の状態にもよりますが、最低でも構造評点を0.7以上 できれば1.0以上にすることをお勧めします。
上部構造評点を1.5以上にできれば一番安心ですが、既存建物の状態によってはかなり難しい場合もあります。
2‑2 建物寿命の延長・資産価値の改善
時間が経つと建物は劣化しますが、耐震改修を行うことで「強度を回復・向上」できるため、住み続けやすくなります。
また、耐震性が改善されることで将来売却を考えたときにも建物の評価がプラスになることがあります。
将来の住み替え時に、高く売れる可能性があります。
2‑3 リフォーム・リノベーションとの相性が良い
リフォームやリノベーションと同時に耐震改修を行うと、内装や外装を一度解体するタイミングで構造補強を入れられるため、追加コストを抑えられる可能性があります。
一度修繕のためにリフォームをした後に、耐震改修を行おうとした場合、また壁や天井の一部を壊す必要があり、結果としてトータルコストが大幅に増えることもあります。
リフォームやリノベーションをする際は、表層面やデザイン面だけでなく、耐震性能を向上させることも同時に行いましょう。
2‑4 補助金・支援制度が利用できる可能性あり
多くの自治体や国が耐震改修に対して補助金制度を設けていますので、実質的な負担を軽くできるチャンスです。
岐阜県の場合で上部構造評点を 1.0以上にする場合
|
補助対象となる 耐震改修工事費 |
補助金額(概算) |
利子補給制度有り(概算) |
|---|---|---|
| 120万円未満の場合 | 工事費×90% | 工事費×50% |
| 120万円以上の場合 |
工事費×40%[上限57.5万円] +一律60万円 +(工事費-120万円)×50%[上限82.5万円] |
一律60万円 +(工事費-120万円) ×50%[上限82.5万円] |
補助金限度額・・・200万円 (利子補給制度有りの場合・・・142.5万円)
となります。
また上部構造評点が0.7以上 1.0未満となる場合には
| 補助対象となる耐震改修工事費 | 補助金額(概算) | 利子補給制度有り |
|---|---|---|
| 120万円未満の場合 | 工事費×61.5% | ー |
| 120万円以上の場合 | 工事費×11.5%+一律60万円 | ー |
補助金限度額・・・84万円
補助金を利用すれば、ほぼ費用負担なしで耐震改修が実現することも可能です。
ただし、その年度の予算、県や市町村の自治体によって助成金の設定が変わることがありますのでご注意ください。
3. 耐震改修の「デメリット・注意点」
良い面ばかりではなく、デメリットや注意すべき点もありますので、以下を事前に把握しておくと安心です。
3‑1 追加工事費用がかかる
もちろんですが、単なる表層的なリノベやリフォームをすることに加え、耐震改修工事にはそれなりの費用がかかります。
内容次第で数百万円単位になるケースもあります。
例えば壁内部の「筋交いの施工」や屋根の全面葺き替えによる「屋根の軽量化」や「基礎の補強」など単体でも高額になることが。
それなり費用負担は覚悟しましょう。

3‑2 工事中の生活への影響
大掛かりな工事をする場合、居住しながらがの工事が難しく「仮住まい」が必要になることもあります。
主に、水回りが使えないと生活に支障をきたしますので、工事期間中の「仮住まい」が必要かどうかも確認しましょう。
工期も内容により数週間〜数ヶ月と幅があります。
3‑3 間取り・デザイン・施工制約が出る可能性
耐震補強と間取りの関係で悩ましいことは、どちらを優先するのか?壁の位置変更が難しかったり、窓の開口部が制限されたり、「思った通りの間取りにできない」というケースもあります。
耐震性を優先するのか、毎日の生活のしやすさを優先するのか、悩ましいケースもあります。
「耐震改修をすれば100%安心」というわけではありません。
建物の状態・施工内容・後の管理によって差が出ます。
補強の目的・手段や手法が建物に合っていないと効果が薄まることも。
4. 費用の目安・影響する要素
リフォームを検討する際、「どのくらいかかるの?」というのは大きなポイントです。以下に目安と、費用に影響する主な要素を整理します。
4‑1 費用の目安
■木造住宅の概算として「100万円〜200万円程度」程度かかる場合が多いと思われます。
■部位ごとの費用(あくまで目安です)では、例えば「筋交いの施工:1箇所5〜20万円」 「耐震パネル施工:22〜65万円」 「屋根の軽量化:80〜150万円」(解体費除く) 「基礎補強:50万円〜」とそれなりの費用がかかってきます。
4‑2 費用に影響する主な要素
-
築年数基準:上述した通り、旧耐震基準の建物(昭和56年以前)では、建物は補強の必要性が高く、費用も高額になりやすい傾向にあります。
-
建物形状・構造:木造かRC造か、平屋か2階建てか、屋根の材質など
例えば、RCの場合には断熱補強の施工が難しく、費用が高額になる場合があります。
また、平屋よりももちろん二階建てのほうが足場や壁の面積が大きくなりがちなため、高額になりやすい。
屋根に関して言えば、瓦屋根は解体処分費用が割高になっており、屋根の軽量化を図る場合でも、瓦の処分費用が高額になるケースもあります。 -
補強の度合い・仕様:耐力壁を大量に入れるか、耐震用接合金物の使用量等。
-
リフォーム・リノベと同時施工できるかどうか:上述した通り、内装リフォーム・間取り変更・断熱改修と同時に行うと効率がいい。
-
補助金の活用:自治体・国の助成を使えると自己負担が減ります。
5. リフォーム/リノベ検討者が「気を付けておくこと」
リフォーム・リノベーションを検討する方が、耐震改修を併せて進めるにあたって押さえておきたいポイントを整理しました。
5‑1 まずは「耐震診断」を受ける
家の現在の耐震性能を知ることがスタート。
床下や小屋裏等、見えない部分もしっかりと検査し、今の耐震性、そして耐震補強箇所をしっかりと事前に把握することが重要です。

床下の検査 木構造の含水率の検査


小屋裏の検査

既存の断熱材の状況把握

小屋裏の含水率検査

建物の傾きの検査
このように、見えない部分もしっかりと検査を行い、耐震改修の必要度合いを事前に把握しましょう。
5‑2 改修とリフォームを“同時”に計画する
例えば、内装をリニューアルするなら、壁の下地などを壊すタイミングで耐震補強を入れると、余分なコストが少なくなります。
改修だけあとからだと“割高”になってしまいます。
5‑3 信頼できる施工業者・設計者を選ぶ
耐震改修は「構造」を扱うため、建築士や木造耐震診断士、構造設計経験のある事業者に依頼することが重要です。
見積もりの根拠、使う材料・金物、工法もしっかり確認しましょう。
5‑4 補助金・減税制度の活用を忘れずに
自治体ごとに助成内容は異なりますが、ほとんどの地域で耐震補助金が設けられています。
予算には枠や工事時期の制約もある場合が多いので、お早めに事前確認をしましょう。
6. まとめ:これからリノベ・リフォームを考えるなら耐震改修も“選択肢”に
リフォーム・リノベーションを検討する際、単に内装・設備を新しくするだけでなく、 「耐震改修も同時に検討する」 ことで、安全・資産価値・安心感の面で長く住める家に近づきます。
もちろん費用や時間の検討・専門家の相談・施工内容の確認など、しっかりと準備が必要です。
今がまさに、災害リスクが高まる時代にあって「住まいの安全性」を高める良い機会と言えるでしょう。
エムズアソシエイツでは、耐震診断や事前の無料相談も随時行っておりますので、お気軽にご相談ください。
Contact
試してみませんか?
ファーストプランは「設計のお試しプラン」。
契約前から設計士が直接対応し、平面図(間取り図)、CGパース、1/100スケールの精密な模型をご提供します。さらに、外構工事や細かな備品まで含めた詳細な見積書を作成し、消費税を含めた最終的な引渡し価格を明確に把握できます。